災害流言研究の必要性についてのまとめ
1.防災効果を最大にする
廣井(1988)は、恐怖や不安が流言によって増幅したとしても、それ直ちにパニックにつながると考えるのは短絡的であるとし、恐怖や不安の中でも人間の思考・判断は完全に麻痺するわけではなく、それどころかどうすれば安全か、どうすれば助かるかを必死に考えると人間の意思作用について肯定的な考えをした上で、災害流言のマイナス・インパクトとして、パニックの引き金になるというよりは、むしろ防災という観点の面での問題であるとしている。つまり、災害流言は災害時の組織や住民の意思決定にマイナス・インパクトを与えるというのだ。個々人においては、虚偽情報、誇張情報、未確認情報としての流言は適切な対応の阻害要因となって、誤った行動を導き、さらに組織にとっても、信頼度の異なる情報が積み重なり、災害対策本部の意思決定の遅延等に反映すると指摘している。
これと同様のことを三上(2004)は、日本における1970年代後半の災害情報研究スタートの流れを追って説明している。1977年北海道有珠山噴火し人びとの間に自然災害に対する危険意識が高まっている中、さらに19...