刑法各論 論点カード
〔個人的法益に関する罪・財産犯〕
★財物の意義
「財物」の意義が、文言上明らかでなく問題となる。
思うに、財物を有体物に限るとするとエネルギーのような無物体が含まれず法益保護が図れなくなるが、他方管理可能な無物体全てを含むとなると財産上の利益との区別もつかなくなるし処罰が広範に過ぎ自由保障を害する。
そこで、有体物並びに物理的に管理可能な無物体が「財物」にあたると解する。
★奪取罪の保護法益
奪取罪の保護法益をいかに解するべきか。
思うに、奪取罪が保障するのは究極的には所有権その他本権ではあるが、法律関係の複雑化した現在経済社会においては財産秩序を維持するために財物の占有それ自体を保護する必要がある。
もっとも、明らかに不法な占有は保護に値しない。
そこで、奪取罪の保護法益は一応適法な外観を有する、平穏な占有であると解する。
★禁制品の財物性
麻薬や覚せい剤、拳銃などの禁制品も「財物」といえるか。
思うに、禁制品であってもその没収には一定の法定手続き要する以上、その限度において法的保護に値する事実上の占有を認めることができる。
そこで、この限りで禁制品にも占有を認...