社会学
川島武宜「日本社会の家族的構成」
1 川島の主張
この論文は、家族制度という視点から日本社会の特殊性を描き出すものである。とくにこの論文は戦後すぐに出されたものであるために、「民主化」という言葉がキーワードとなっている。すなわち、日本社会では、その家族的意識のために、個人が「自らの独立の価値ある主体」として意識することができずに、
社会学
川島武宜「日本社会の家族的構成」
1 川島の主張
この論文は、家族制度という視点から日本社会の特殊性を描き出すものである。とくにこの論文は戦後すぐに出されたものであるために、「民主化」という言葉がキーワードとなっている。すなわち、日本社会では、その家族的意識のために、個人が「自らの独立の価値ある主体」として意識することができずに、真に近代的な「権利義務の関係」、互いに平等な主体者の間の関係を構築することができない、と主張している。そのうえで、日本の家族生活の基本原理を、封建的=儒教的家族の基本原理・庶民家族の基本原理、そしてこの二つを止揚させたかたちで家族外の社会生活の基本原理(つまり、戦後日本社会にもみられてくる特殊性)と、三つに分けて説明している。まえ二つの要約はさておき、最後の家族外の社会生活の基本原理を中心に見てみよう。
川島は、家族制度の生活原理は、家族内部に存在するだけではなく、その外部に自らを反射すると述べ、これにより家族生活の外部における非近代的=非民主的社会関係を必然ならしめるといっている。人間は家族外の世界においても多くの結合関係を作り、特に日本では家族生...