1.エリオットの詩の初期から中期の作品を概観せよ
T.S.エリオットの代表的な詩を初期、中期に分けると、このようになる。初期は3編、「ブルーフロックとその他の観察」「1920年詩集」「荒地」、次に中期は内容的に関係の深い「ダンテ」論をはさみ、次の3編、「うつろなる人々」「妖精詩集」「ダンテ」「灰の水曜日」が挙げられる。
初期作品には「三月兎の調べ」において、発情期にある「三月の兎」を詩人自身に見立て、興奮し悩む姿から無関心な観念論者へと変わりゆく詩人の精神的な不安を描いたように、詩作技術の生硬と未熟さゆえから、エリオット独特の表現方が露にあることが多く、エリオットの長く、独創的な詩業を予感させるものがすでにあった。また「荒地」では近代文明の破壊とその前後の繁栄の中で潜む堕落と衰亡の姿を、神話や民俗学などを駆使して描き、極めて難解な詞であったが、埋められた白骨が春の雨に蘇るような酷薄さと甘美さを描き、当時の若者の胸を打った。若かりし詩人エリオットが難解な作品を書くことでモダニスト詩人として成長する様が読み取れる。
中期作品を語る上で、エリオットの英国国教への改宗と英国への帰化は重要な要素...