中国社会を理解するキーワードの一つに儒教がある。中国歴代王朝は儒教をどのように取り扱ってきたのか、具体的事例をふまえて述べなさい。
儒教とは春秋時代の孔子により大成された哲学・思想である。孔子は、周の時代の厳しい身分制度によって保たれていた秩序の回復を目指し、「仁」と「礼」を重視した。仁とは、親子の愛情を基底とする他者への親愛の情である。礼とは、仁の気持ちを形にしたものである。孔子は同時代の武力による支配を非難し、この仁と礼を持った支配者が、徳を持って統治するべきだとした。
儒教の思想は統治者にとって、統治の方法としては都合がよく、様々な学派に分かれながらも春秋時代以降も採用されていくこととなる。本論では時代ごとに儒教の取り扱われ方について、その特色や他思想・他国への影響も踏まえつつ論ずる。
【戦国時代】
孔子の死後、儒学は八派に分かれることとなるが、その中で現在まで有名なのが孟子と荀子である。
孟子は性善説を唱え、徳を持っていない統治者に対しては革命を起こすことも厭わないとした過激な思想であったため、魏・斉・宋・魯などで遊説して回ったが、その言説は君主には受け入れられなかった。...