『「都市主義」の限界』養老孟司(中央公論新社 二〇〇二)に所収されている評論『「考えているかどうか」を考える』(養老孟司)を取り上げる。どのような主題がどうやって論述されているか説明するために、まずは段落相互の展開について説明しよう。
冒頭の二文で、日本人が独創性や創造性といったものに関心が強いことを話題にされ、第四段落目までは全てを規則に当てはめる習性を日本人がもの考えていない典型例として批判する。第五~第八段落は、その実例としての大学受験や企業の採用活動の話題であり、抽象から具体と演繹的展開になっている。
第九~第十二段落ではその原因としての都市化を話題にする。結果から原因に展開することで話題が都市化に移る。第十一、第十二段落では考えるということにおいて、自然と都市とが対比されている。自然と対峙してきたかつての生活ではその脅威に備えるために常に考えることが必要であるが、自然の脅威に比べると都市での危険は小さく安全であるために考える必要性がなくなるという。
第十三、第十四段落では、都市化の別の弊害が指摘される。安全な都市型生活で危機意識が薄れることが当たり前になると、トラブルに遭って...