設題
⇒言葉の身振りについて。
設題
⇒言葉の身振りについて。
言葉は、「話す」、「聞く」、「書く」、「読む」など、その用途の幅は多様であり、相手とコミュニケーションを図る手段として、私達が人間社会を営む上でなくてはならないものである。本稿の設題にある「言葉の身振り」とは、「読む」分野において、言葉がどのような影響や効果を作品自体に、または読み手に与えているのかということを意味すると解釈する。このことを前提に、いくつかの文学作品を例に挙げながら、「文字の表記」、「方言」、「表現の繰り返し」、「比喩」、「時代」の5つの観点から考察していきたい。
文字の表記
「文字の表記」については、主に日本文学において言えることであるが、全く同じ言葉でも、「カタカナ」「ひらがな」「漢字」の表記を使い分けることで、その言葉の持つ意味が幾分違って見える場合がある。
カタカナで表記されていると無機質で、ドライで、コンクリートの壁に囲まれた都会を連想させる。ひらがなで表記されていると暖かく、優しい雰囲気が出て、どこか田舎の祖母の家を思い出させる。漢字で書いてあると知的、古典的、頑固な印象、あるいは少し陰暗な印象さえ受ける。
例として、川上...