海外出張者安全マニュアル
内容
1.安全対策の基本的な心構え
(1)まず心構え
(2)行き先はどんなところか
(3)何を調べるか
2.安全な出張のためのトラベルヒント
(1)貴重品の盗難・紛失に備えて
(2)飛行機の利用
(3)タクシーの利用
(4)ホテルの利用
3.安全を確保するための行動ルール
(1)一般的な行動ルール
(2)ホテルでの行動ルール
(3)空港での行動ルール
(4)市街地での行動ルール
4.海外出張と健康管理
(1)渡航前の準備
(2)航空機の中での注意
(3)出張地での注意
5.緊急事態に備えよう
(1)政情の悪化、急変に対して
(2)路上強盗に襲われた場合
(3)医療緊急事態の場合
1.安全対策の基本的な心構え
海外出張が決まったら、まず第一に、行き先がどんなところなのか知りたくなるものですが、現地の実際の状況を自分の抱いている印象だけで判断すべきではありません。次に、出発のための準備にかかりますが、忘れてはならないのが「海外には日本の常識では通用しないことがたくさんある」ということです。持ち物や手続き上の準備もさることながら、心の準備も周到に勧める必要があります。
(1)まず心構え
海外出張期間を安全に過ごすための心構えの基本は、次の4箇条です。いずれも当然のことですが、開放的になりがちな旅先で自らの気持ちを引き締める意味から改めて列挙しておきます。
・リスクを自覚すること
海外では日本とは異なる常識、風俗習慣、国民性、政治、経済情勢に触れることになります。誤解されないこと。誤解しないこと。トラブルに巻き込まれないこと。まず、日本の常識では割り切れないこともありうること、それが自らのリスクにつながることを自覚しましょう。
・自ら危険を招かないこと
デモや騒動の現場に近づかないこと、飲酒したら車の運転をしないことなど、日本国内でも社会人として常識の範囲のことでしょう。しかし、海外では異国情緒と開放感からつい足を踏み外しがちです。甘い誘惑に負けず、常に自らを律して、油断せず、犯罪や事故・トラブルから距離を置くことを心がけましょう。
・目立たないこと
服装や行動が派手で人目につくと犯罪のターゲットになりやすいのは自明の理です。現地の人に違和感をもたれないよう落ち着いた装いと行動を心がけましょう。
・冷静に行動すること
不幸にして犯罪や事故に巻き込まれた場合もあわてず冷静・沈着に対応し、被害を最小限にとどめる努力を続けなければなりません。基本は自分自身の身体生命の安全です。
(2)行き先はどんなところか
日本に寄せられる海外の一般情報は、量こそ膨大ですが、正確さや質には問題がある場合もあります。公平で偏りのない情報を収集して、リスクを把握しなければなりません。できるだけ新しい、生の情報を手軽に入手するには、次のような方法があります。
・最近その地域へ行ったことのある人から話を聞く。
・航空券の手配を依頼する旅行代理店などから情報をもらう。
・海外安全情報サービスを利用する。
(例)外務省海外安全ホームページ
http://www.pubanzen.mofa.go.jp/
→ 海外危険情報、国・地域別海外安全情報、国別テロ情報、海外医療情報など
豊富な情報が入手できます。
(3)何を調べるか
海外出張を快適にこなすためには、まず出入国審査や通関審査など、国の入り口でトラブルを起こさないことです。このためには、次の事項を事前に調べておかなければなりません。
・パスポート以外に必要な書類はないか。― 査証(ビザ)、出入国、税関申告書など。
多くの国では、海外出張の範疇に入るような短期の滞在では、査証(ビザ)は不要ですが、出入国や税関申告書の提出を求められることがあります。
出入国、税関申告書などは、飛行機の中でも手に入れることは可能ですが、事前に入手して間違いのないように記入しておくべきです。
・持ち込み品の制限はないか。
煙草類、酒類などのほか、FMラジオ、ビデオテープ、美術品などの持込を制限している国もあります。また、酒や煙草の免税制限は、国によって異なります。多量に持ち込む場合は、税金を払えばよいのですが、スムーズに通関するためには得策とはいえません。
・空港からの交通機関は安全に利用できるか。
場所によっては到着時に出迎えの者を頼むこと。但し、事前の打合せと異なる出迎え者がきた場合、相手が依頼先の出迎え人であるかどうか、依頼先の人間の名前、住所などを質問して確かめること。
それができない場合は、タクシーよりも安全なホテルの車による送迎、ないし空港のリムジーンを利用するなどで対応する。
・予防注射が義務づけられてはいないか。
中南米や東南アジアの一部では渡航前の予防接種が義務づけられている場合もあり、事前に情報を入手し適切な対応をする必要があります。
2.安全な出張のためのトラベルヒント
盗難や交通機関利用上のトラブルを防止することは、快適で安全な海外出張に欠かせません。
ここでは、航空機、タクシー、ホテルの利用の仕方など、出張を計画通りに進めるための基本的なノウハウをまとめました。
(1)貴重品の盗難・紛失に備えて
1)パスポート
・盗難、紛失に備えてコピーを取り、写真2枚とともに、パスポートと別に保管しましょう。
・パスポートの海外での再発給には2週間以上かかります。盗難、紛失を防ぐため不用意に持ち歩かず、他の貴重品とともにホテルの貸金庫に保管します。
・紛失した場合は、直ちに最寄りの警察に届けた後、日本大使館、領事館で再発給を申請します。必要書類は次のとおりです。
再発給申請書(在外公館にあります)
写真2枚
警察の証明書
現地で信用できる取引先などに身元の保障をしてもらうと、再発給までの時間が短縮されることもあります。
・日本に直帰する場合は、パスポートに代えて2~3日で発給される「帰国のための渡航書」を申請します。
2)航空券
・盗難、紛失の場合は、直ちに、イニシャルキャリア(最初に搭乗した航空会社)の事務所に、なければ、次に搭乗する航空会社の事務所に連絡し、換金されることを防ぎましょう。
3)トラベラーズチェック
・購入後、直ちに所持人欄にサインをします。漢字でも構いません。サインがなかったり、2ヶ所ともサインがされている場合は、紛失しても再発行してもらえません。
・紛失した場合は、直ちに警察に届けるとともに、最寄りの取扱銀行の窓口で再発行の手続きをしましょう。
4)クレジットカード
・国際的に通用するものを携帯するようにしましょう。
・カードの種類、番号、緊急時連絡先を必ず別に控えておき、盗難、紛失の際は直ちに連絡を取って、無効とする手続きと再発行の依頼をします。
(2)飛行機の利用
1)飛行機便の選択
・政情が安定していない国の航空会社は避け、知名度の高い会社の便を選びましょう。国際政治で中立的立場にある国の航空会社が最も安全と考えられています。
・到着時刻が深夜や早朝になる便は避けましょう。
・乗り遅れたり、キャンセルされると、その日に移動できなくなります。最終便の予約は避けましょう。
2)搭乗手続き
・予約は、優先順位を示すだけのものであり、搭乗72時間前までにリコンファーム(予約の再確認)をします。ただし、72時間以内しか滞在しない場合や航空会社によっては、リコンファームが必要ない場合もあります。電話でリコンファームをした場合は、応対者の名前(あるいはリコンファームNo)を控えておきます。
・チェックインの際には、目的地までの航空券のみ、もぎ取られたことを確認しましょう。
・便がキャンセルされ搭乗できなくなった場合は、別便の予約を当初搭乗予定の航空会社に手配させます。スケジュールの変更は、直ちに関係者に連絡しましょう。
3)便の乗り継ぎ
・国際線を乗り継いで目的地に向かう場合、チェックインの際に「スルー」で荷物を預けると、荷物は乗り継ぎ空港で自動的に接続便に積まれます。一方、国内線への乗り継ぎであれば、いったん荷物を受け取って税関検査を受け、再度預けなければなりません。
・搭乗した便が遅れて接続便に乗れない場合は、早めにスチュワーデスに相談しましょう。
4)携行荷物
・スーツケースやカバンは自分のものとすぐ見分けがつくよう、ベルトをかけたり、ステッカーなどを貼っておきましょう。また、名札は、あまり目立たないものを複数付けておくほうが安全です。
・チェックイン時に荷物を預けた際、受け取ったバッケージ・クレイム・タグは、必ず荷物の個数分だけあることを確認しましょう。
・到着後、預けた荷物がバッケージ・クレイム・エリアで見つからない場合は、航空会社の係員にクレイム・タグを見せ、探してもらいます。
・荷物が発見されない場合は、便の到着後4時間以内に、航空会社に依頼して手荷物事故報告書を作成してもらい、内容を確認してそのコピーを受け取ります。
・預けた荷物が別の空港などへ誤って配送されるなど、荷物をスムーズに受け取れないことは頻繁にあることです。短期出張の場合はできるだけ機内持込手荷物だけで出発できるよう工夫してみましょう。到着後の空港での待ち時間も短縮できます。長期出張で荷...