信じている宗教が異なると、社会通念・生活習慣・人生観が全く異なる。正月には初詣に行き、大安、仏滅に気を配り、クリスマスを祝う日本人にとって日常的に理解しづらいが、自分と異なる宗教を信じる人との宗教観の違いは意識する必要がある。少なくとも自分が苦痛に思わないことでも、ある宗教を信じる人にとっては耐え難い苦痛になることがあるかもしれないからである。
また、日本国憲法では政治と宗教が結びつくことを厳しく戒めている。これを政教分離の原則といい、信教の自由の保障を確保するための制度だとされている。すなわち国が宗教と結びつくと、個々の人の信教の自由を圧迫することが多いという経験から、多くの国でこのような原則が採用されているのである。しかし、そうはいっても、完全に国と宗教との関わりあいを絶つということは難しいものであるし、かえって宗教を信仰する人に対する差別にもつながりかねない。それでは、国家はどのような宗教活動をしないようにすればよいのか、またその基準をどこに求めればよいのだろうか。以下考えてみることにする。
日本国憲法20条の立法趣旨
憲法は、「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する」(20...