①事例における在学契約の解除と同契約上の特約の効力について、民法と消費者契約法に照らして論ずる。
1、問題の所在
事例において、大学入試に合格した者が入学手続をした後、他の大学に合格したなどの理由で入学を辞退した場合、前払した学納金の返還請求が出来るのだろうか。多くの大学では、入学試験案内などに、一旦支払った入学金等の返還は一切応じない旨の記載がある。学部によっては、入学金等の金額が多額となる為、この問題は、入学辞退者にとっても、大学側にとっても切実な問題となっている。
2、在学契約上の特約の効力
在学契約とは、大学における講義、実習などの教育をうける性質のほか、大学施設利用契約の性質も有する契約。つまり、学生が大学生として活動する為の基本的で必要不可欠な契約と言える。在学契約の性質上、入学する意思がある者が金銭でその意思を表明するものと解されるため、在学契約の効力は強力なものであると考えられる。では、在学契約を、学生の都合で簡単に解除できるのだろうか。
消費者契約法とは、消費者と事業者の間で締結される契約をいう(消費者契約法二条三項)。契約の取消または無効は、民法及び商法以外の...