1、事例
買主Aと売主Bの間には、Bの倉庫に保管しているアサヒビール100ケースの内50ケースを、契約日から一週間後を引き渡し期日として購入する契約が存在する。しかし、引き渡しの為にBが自身の倉庫からアサヒビール50ケースを倉庫から搬出し、トラックに積載しておいた所、トラックごとビールが滅失してしまった。
2、検討
事例における買主Aと売主Bの間には、両者の合意が存在する為、有効な売買契約関係が存在している(商法五〇七条)。そのため、契約締結時に定められた期日に、Bはアサヒビール50ケースを引き渡す必要がある。だが、本事例では、Aに引き渡すアサヒビールがトラックごと滅失している。その為、まず滅失後も契約関係は存続するのかが問題となる。
契約時点で引渡債務の実現が不可能である「原始的不能」の場合、契約が無効となる。従って、契約関係は存続しない。だが、本事例においては、契約締結の段階では引渡債務は存在している。具体的には、Bの倉庫に、トラックごと滅失したビール50ケースが存在している。従って、契約無効とはならず、滅失後もA・B間の契約関係は有効に存在する。
Aはビールと引き換えに金...