資料:8件
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不動産登記と94条2項
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【1】Aは、Bから同人が所有する甲土地を買い受けたが、事情があって、BからCに所有権移転登記をし、その際、Cの了解を得ていなかった。その後、Cは自己名義の所有権移転登記があることを知り、これを利用し、甲土地をDに売却した。一方、Bは甲土地をEに対しても売却していた。次の叙述は○か×か。理由とともに述べよ。
【2】Aの唯一の身寄りである息子Bは、Aから経営を引き継いだ会社の資金繰りのために、自己名義の土地に抵当権を設定して銀行から融資を受けた。その後、Bは、さらに将来融資をしてもらうために、自己の信用を見かけ上増大させておくことを思いつき、最近判断能力がにぶってきたから預けておくといわれてAから預かった権利証や登記関係書類を利用して、Aに無断でAからBへの贈与が行われてことにして、Aの所有する甲土地の登記をBに移転した。ところがその後、Bは脇見運転で交通事故を起こし、被害者との示談で支払う金額を捻出するために、甲土地を不動産業者Cに売却し登記も移転した。Cは更に甲土地をDに売却したが、登記はまだ移転していない。この場合のABCDの法律関係につき論ぜよ。
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レポート
法学
虚偽表示
虚偽の外観
帰責性
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94条2項類推適用について
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94条2項類推適用について
94条2項を類推適用する場面を考える前にまず、94条で規定されている虚偽表示について明らかにしたい。94条に規定されている虚偽表示とは、たとえば、債務者Aが、A所有の不動産を債権者に差し押さえられそうだったので、Aは友人Bと通謀し、不動産をBに売ったということにして、財産を隠すといった行為が挙げられる。
このような場合、Aは「不動産をBに売るということにした」という表示行為をしたが、その表示行為をするきっかけとなった効果意思は「土地をBに売るつもりはない」というものであり、表示行為と対応していない。つまり、意思と表示の不一致ということになり、無効であると解釈できる。これは94条1項で「相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。」と規定されている。
ただし、もし第三者Cが上記のような虚偽表示を、真実であると誤解して信じてしまい、Bからその不動産を購入したような場合、Cが保護され、Cに対しAは虚偽表示の無効を対抗できない。このことは94条2項で「前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。」と定められている。
さらに、94条2項を深く考察すると、この規定は権利外観法理という考えの表れであるということがわかる。権利外観法理とは、真実とは違う外観を作り出した者は、その外観を信頼してある行為をした者に対して、外観に基づく責任を負うべきである、という考えである。つまり、今回の例に即して考えると、Bと通謀してB所有の不動産のように見せかけた真の不動産所有者であるAよりも、その外観を信じて不動産の取引を行った第三者Cのほうが保護されるべきであり、Aはその外観を作り出した責任、つまり不動産の所有権を失ってしまうのはやむを得ないということになる。
ここから権利外観法理は、外観を信じて行為をした第三者の動的安全、取引の安全を確保するために、真の権利者の静的安全を犠牲にしていることがわかる。
さらに、この権利外観法理に基づく94条2項を類推適用することによって、ある一定の条件において、真実ではない登記を信頼して取引をおこなった者の安全を保護するということに至っている。
この「ある一定の条件」とは、たとえば、Aが所有している不動産の登記名義をBがAの承諾なしに自己の名義とし、Aが自身の不動産がB名義になっているということを知りながら、そのまま放置したという前提があり、Bはこのような状態でその不動産を善意の第三者Cに売ってしまったという状況が挙げられる。
このような場合、94条2項を類推適用し権利外観法理を用いて、不実登記を信頼して取引を行った善意の第三者Cは保護されるが、不実登記を知りながら放置したAは、その外観を作り出した責任から、Cに対してAB間の不動産移転の無効を主張できず、保護されないと解することができる。
この94条2項の類推適用は、日本の登記制度に由来する。日本の登記には公信力がないために、原則として取引の安全は確保されない。また、動産には即時取得という規定が民法192条によって認められており、その公信力が認められているが、不動産には動産のような明文の規定が存在しない。よって、94条2項を類推適用することによって、登記の公信力をある程度認めているということになっている。
さて、94条2項を類推適用することによって権利外観法理から、善意の第三者を保護するということ説明したが、では実際このシステムがどのように運用されているのだろうか。判例を元に考えたいと思う。
94条2項類推適用を考えるときに、特に重要
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法学
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民法94条2項の類推適用について
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通謀虚偽表示とは相手方と通謀して内心的効果意思と異なる意思表示をすることをいう。これは、心裡留保・錯誤と同じく、表示行為に対応した効果意思が存在していないという意味で、意思の欠缺の一形態である。(意思表示をした人自身が真意に反することを知っている点では心裡留保と同じであるが、相手方との通謀がある点で異なる。)
*具体例
多額の借金を抱えた者Aは甲不動産を所有していたが、この不動産が債権者に差し押さえられて、競売にかけられてしまうことをおそれて、知人Bと共謀し甲不動産をB に贈与したことにして登記名義を変えてしまった。(刑法96条の2「強制執行妨害罪」としても処罰される。)
94 条1項では「通謀虚偽表示は、原則として無効である」と規定されている。先の具体例で挙げたA・B 間の贈与契約の場合では、「あげたい」という意思表示が94 条1項によって無効とされる。したがって、所有権はA のものであり、B 名義の登記も不実の登記として無効ということになる。
94 条2項では「前項の意思表示の無効は、これをもって善意の第三者に対抗することを得ず」と規定されている。つまり善意の第三者との関係では、意思表示が有効なものとなる。
*具体例
B に登記名義があることを信頼して、B から不動産を買った第三者C がいたとする。
この場合、94 条1項によるとA・B 間の贈与契約は無効とな、B は単なる無権利者である。そうすると、C は、単なる無権利者から不動産を買ったことになり、仮に代金を支払済で、不動産の所有権を取得できないことになってしまう。
そこで善意のC を保護するために94 条2項は、A・B は、善意のC に対して、「A・B 間の贈与契約は通謀虚偽表示で無効だった」と主張できない、言い換えれば、C は「有効だった」と主張できるとする。
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民法94条2項
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問題演習 94条2項類推適用
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Aの唯一の身寄りである息子Bは、Aから経営を引き継いだ会社の資金繰りのために、自己名義の土地に抵当権を設定して銀行から融資を受けた。その後、Bは更に将来融資してもらうために、自己の信用を見かけ上増大させておくことを思いつき、最近判断能力が鈍ってきたから預けておくといわれてAから預かった権利証や登記関係書類を利用して、Aに無断でAからBへの贈与が行われたことにして、Aの所有する甲土地の登記をBに移転した。ところがその後、Bは脇見運転で交通事故を起こし、被害者との示談で支払う金額を捻出するために、甲土地を不動産業者Cに売却し登記も移転した。Cは更に甲土地をDに売却したが、登記はまだ移転していない。この場合のABCDの法律関係につき論ぜよ。
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本事案では、Aより甲土地についての権利証や登記関係書類を託されたBが、これらの書類があることを奇貨として、甲土地を自己に贈与されたこととし後にCに売却し、更にその後甲土地がDに転売された事案である。以下、ABCDのそれぞれ主張及びとり得る法律構成について論じる。
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1 AのCDに対する主張及びその法律構成について
本事案では、AはまったくBに甲土地を贈与する意思はなかったのであるから、甲土地は自己のものであるとしてCに対し登記返還請求及び、Dに対して土地の引渡しを請求できるか。この点に対しC及びDとしては、94条2項の第三者保護規定を直接適用又は類推適用して保護を求めることが考えられ、どう解釈すべきか問題となる。
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総則
94条2項類推適用
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民法 民法94条2項の類推適用法理
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民法94条2項の類推適用法理
1 94条2項の類推適用の法理とは、どのようなものか。
この法理が妥当するのは、どのような場面か。要件、権利外観法理との関係は?
94条②は権利外観法理の現れと見られるために、本来の虚偽表示の事案以外でも、権利外観法理を適用すべきだと考えられる場面で類推適用される。
要件:権利者本人に虚偽の外観を作出したに等しい落ち度が必要
(偽りの登記などを単に消極的に放置していたというだけでは不十分で、積極的に承認したといえる程度の関与が必要)
対抗問題 94条2項類推
A(権利者)→C A(無権利者)→C ・無権利者から譲受けた人の問題
↓ ・不動産の問題ばかり。登記を信じた人の保護のため
B ・動産の問題は出てこない。動産は別の権利外観法理(即時取得)で保護
★2 94条2項の類推適用の法理は、登記の公信力を認める考え方と、どこが異なるのか。
動産の取引…占有に公信力あり
不動産の取引…登記に公信力なし
∵価値の大きな財産については動的安全よりも静的安全を保
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