不在者の生死不明の状態があまりにも長く継続し、その財産上および身分上の法律関係がいつまでも未確定のままとなることは、好ましいことではない。生きていないかもしれないのに、残された配偶者は再婚もできず、相続人は相続もできないなど利害関係人に不利益を及ぼす。そこで、民法は、家庭裁判所の宣告によってその者を死亡したものとみなす「失踪宣告」という制度を設けた。死亡した扱いをすることで、法律関係を安定させようというわけである。
失踪宣告の要件は、配偶者・推定相続人などの利害関係人の請求に基づき、家庭裁判所が次の場合に行う。すなわち、不在者の生死が7年間わからない場合(普通失踪)か、戦地にいった者、沈没した船に乗っていった者、そのほか生命の危険を伴う危難に遭遇した者の生死が、戦争が終わり、船が沈没し、危難が去ってから1年間わからない場合(特別失踪)である(30条)。
失踪宣告の手続は、家庭裁判所は普通失踪においては6ヶ月以上、特別失踪においては2ヶ月以上の期間を定めて公示催告をし、それでも不在者に関する情報が得られなかったときに、失踪宣告の審判をする(家審規39条以下)。
失踪宣告には、主に...