精神障害者の人権
障害者として,患者としての権利の要点を押さえる。
社会防衛を目的とする精神科医療と,その延長上に新設された「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」の問題性,また精神科病院のなかでの患者としての非人間的な扱われ方の歴史と権利擁護の必要性,その手段について述べる。
精神障害者が地域で受ける差別の問題と,当事者運動による権利擁護の可能性の大きさについてふれる。さらに,権利保護を目的に最近整備が進んだ成年後見制度と地域福祉権利擁護事業(日常生活自立支援事業)についても概観する。
人権について語る際,国際基準ははずせない。先進国でありながら権利をめぐる法的整備の遅れた日本ではなおさらである。そこで国連決議「精神病者の保護および精神保健ケア改善のための諸原則」をはじめとする国際基準や,諸外国の進んだ権利擁護活動に日本の状況を照らしながら書き進めたい。
精神障害者の権利
A 精神障害者の,障害者としての権利
障害者の権利は,20世紀最後の四半世紀から今世紀にかけて歴史に残る進展を遂げつつある。1975(昭和50)年に国連総会で決議された「障害...