『地球環境問題とは何か』、考えよう
本書は、地球環境問題という非常に大きな領域の問題を、純粋に自然科学の側面からだけではなく、その政治的性格も含めてより広い形における問題として捉え、問題提起を図っていくものである。本稿では、本書を概略的にまとめ、地球環境問題を取り巻く様々な要因について分析したうえで、それをいかに解決することができるか私見を述べていく。
まず、地球温暖化が政策問題として広く認知されるようになった経緯を述べる。1970年代後半まで、地球は寒冷化していくという議論をしていたのが世界の気象学者の主流であり、地球温暖化の可能性については、ほんの少数の学者が唱える程度のものだった。しかし、数年の間で大きな世界認識の変換-パラダイム転換が起こる。その大きなきっかけは、1988年公表された、「ハンセン論文」である。この論文は、多くのアメリカ人が密かに抱いていた心配とあまりに一致してしまったこと、本来、政策評価や政策提案が行われることはない純地球物理学の論文において、二酸化炭素排出削減の政策シナリオが精密なグラフで明示されているところから、社会に対して絶大な影響を与えた。この後、国際...