民法は市民生活における市民相互の関係を規律する私法の一般法である。本リポートでは、夫婦による民法第76 1条「日常の家事に関する債務の連帯責任」と民法第11 0条「権限外の行為の表見代理」の成否について述べる。
民法第76 1条では、日常の家事に関する債務(日常家事債務)の連帯責任として、以下のとおり規定している。
「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない」
つまり、婚姻を経た夫婦は各々が連帯責任を負うというものである。例えば妻が第三者とある法律行為を行ったため、夫に債務が生じた場合、夫はその債務を負うものである。
ここでいう「日常家事債務」とは、食費や医療費などの生活する上で必要な債務や、住宅や子供の教育費のことであり、家事全ての行為ではない点に注意すべきである。以下の判例でも日常家事代理権について一定の方針を導いている。
最高裁一小判昭和44.12.18民集23巻12号24 76頁判決要旨
夫所有の不動産を売却するような行為は...