証券市場は資金供給者と資金需要者を結びつけ、経済の血液である資金を融通する市場であり、資本主義経済国家にとってなくてはならない市場である。わが国における最初の証券発行は明治3年にロンドンで発行された英貨建国債であると言われている。その後秩禄公債や株式および社債等が相次いで発行され、市場では公正な価格形成を求められていた。そこで政府はロンドン株式取引所を手本として、「株式取引条例」を明治7年に制定した。しかしわが国の経済に適さない規定が数多く内在していたため、取引所の成立が行われることはなかったのである。しかし、市場では相次いで有価証券の発行が行われたため、明治11年に「株式取引所条例」が制定され、渋沢栄一らが設立に携わった東京株式取引所や大阪株式取引所が設立された。これにより名実ともにわが国の証券市場が誕生したのである。設立当初は国債取引が大部分を占めていたが、企業設立ブームや経済成長のため、株式取引が次第に活発化していったのである。
明治26年には「取引所法」が制定され、戦前の株式取引所の基本法となり、第1次世界大戦から戦後にかけての日本経済の重化学工業の発展に伴う、株式市場の発...