憲法論文答案練習
~検閲の禁止~
【問題】
表現の自由の優越的地位について説明した上で、事前抑制原則禁止の法理と検閲の禁止について比較して論ぜよ。
【考え方】
・・・検閲の禁止については、「検閲」の概念自体をどのように捉えるかが問題となるが、この点について見解が分かれる。
1)広義説①
・・・公権力が外に発表されるべき思想の内容をあらかじめ審査し、不適当と認めるときは、その発表を禁止することを意味するとする見解
2)広義説②
・・・公権力による表現行為に対する事前審査、および事後審査であっても実質的に事前審査と同視しうる重大な影響を表現の自由に与える場合が検閲であるとする見解
3)狭義説
・・・表現行為に先立ち、行政権がその内容を審査し、不適当と認められる場合にその表現行為を禁止する制度が検閲である(主体が行政権であること、その禁止が絶対的であること、内容に対する審査に限定することに特徴を有する)とする見解
【答案例】
検閲の禁止については、「検閲」の概念をどのように捉えるかをめぐって争いがあり、まず、思想の発表に対する事前審査なのか、表現行為に対する事前審査なのかが問題となる。
この点につき、私は、表現行為に対する事前審査であると考える。なぜなら、思想とそれ以外の事実を区別するのは、実際上困難であるし、思想も政治社会経済的事象に関する事実情報も、同様に各人の精神活動及び立憲民主政の運営に不可欠だからである。
次に「検閲」の主体、その禁止が絶対的なのか、例外を許すのか、表現内容に対する審査に限定されるのか、表現行為の外形・方法に対する審査も含むのか、という3点が問題となる。
この点につき、まず、「検閲」の主体を広く公権力と捉え、例外を許す見解もあるが、妥当でないと考える。なぜなら、事前抑制原則禁止の法理が憲法21条1項から当然導かれる以上、それとは別に同条2項が検閲の禁止を定めるのは禁止を絶対的なものとする趣旨と考えられるし、検閲の禁止の長所はその形式性、絶対性にあると考えられるからである。また、検閲の禁止は沿革上、行政権との関係で発生したし、主体を行政権に限定することにより絶対性を貫けるのである。そこで、私は、検閲の主体は行政権に限定され、しかも、検閲の禁止は絶対的なものであると考える。そして、絶対的禁止というその強力な効果に鑑み、最も抑止力の強い表現内容に対する審査に限定されると考えるべきである。
以上より、検閲とは、表現行為に先立ち行政権がその内容を審査し、不適当と認める場合に表現行為を禁止する事前審査の制度であると考える。
以上