憲法論文答案練習
~憲法改正の限界~
【問題】
憲法の改正に限界はあるか。
【考え方】
・・・憲法96条により許される憲法改正の見解については、
Ⅰ限界の存在を肯定する見解(限界説)
Ⅱ限界の存在を否定する見解(無限解説)
に大きく分かれ、それぞれの見解内でも理論構成が分かれる。
Ⅰ 限界説
1)法理論的限界説
・・・憲法改正憲は、憲法制定権力の下位であり、それに従属する法的な力であることを根拠として、憲法制定権力の意向に反する改正は許されないとする見解
2)自然法論的限界説
・・・憲法改正権も憲法制定権力も、近代自然法に拘束されるものであるから、実体憲法規範の形をとった自然法(根本規範)を否定する改正は許されないとする見解
Ⅱ 無限解説
1)法実証主義的無限界説
・・・法実証主義の立場を前提とし、憲法制定権力は法以前の生の実力であるから、憲法制定権力が憲法改正権を制約することはできないこと、憲法規範に価値秩序は認められないこと等を根拠として、憲法改正に限界を認めない見解
2)主権全能論的無限界説
・・・主権者が全能であることを前提として、憲法改正に限界はないとする見解
2-ⅰ)制憲権・改正権憲法内同視説
・・・憲法制定権力と改正権の主体はいずれも主権者であり、かつ主権者は全能であることを前提として、憲法改正に限界はないとする見解
2-ⅱ)制憲権・改正権憲法外同視説
・・・憲法制定権力も憲法改正権も生の実力であり、法学の概念として認められず、憲法改正は全能である主権者の革命行為であることを根拠として、憲法改正に限界はないとする見解
【答案例】
憲法の改正に限界があるのか。
思うにそもそも憲法改正にあたっては、憲法改正権が問題となるが、この憲法改正権は、憲法の最高法規性(憲法98条1項)と考え合わせると国民の憲法改正権が憲法典中に制度化されたもの、すなわち「制度化された制憲権」であるものと考える。
そして、この制憲権の思想自体、近代自然法に基づいて、基本的人権を保障するためのイデオロギー的概念として構築されたものであることを考えると、人権保障を最高価値とする根本規範(実定憲法規範の形をとった自然法)は制憲権の基本的前提といいうるのである。とすれば、根本規範は制度化された制憲権たる憲法改正権を拘束する内在的制約原理であって、改正権をもってしても根本規範に触れるのは、憲法の破壊であり、法理論的に不可能であるというべきことになる。
したがって、その意味で憲法改正には限界があると解する。