~手形意思表示の欠缺瑕疵(創造説)~
【問題】
Yは、Aに対する10万円の債務の支払のため10万円と記載すべきところ、誤って100万円と記入した約束手形をAに振り出した。手形がAから善意無重過失のXに裏書譲渡された場合、XはYに対して手形金100万円の支払を請求できるか。
適用否定説
①交付契約説・発行説を前提とする見解
・・・意思表示の欠缺・瑕疵に関する民法の規定は、手形行為には全く適用されない。手形であることを認識し、または認識すべくして署名すれば手形行為は有効に成立し、意思表示の欠缺・瑕疵は人的抗弁事由なるにとどまる。
②二段階説を前提とする説
・・・手形行為を手形債務負担行為と手形権利移転行為とに分析し、
ⅰ)手形債務負担行為は相手方のない単独行為であるから、相手方の存在を前提とする民法の意思表示に関する規定の適用はない(手形であることを認識し、または認識すべくして署名すれば手形行為は有効に成立する)。
ⅱ)手形権利移転行為は、契約であるから、意思表示に関する規定の適用がある。
・・・善意者保護は善意取得による。
(B) 適用否定説(二段階説)に基づ...