手形小切手法論文答案練習 手形行為総論
~代理(代表)権限濫用~
【問題】
Y株式会社の代表取締役甲は、取締役会の承認を得ることなく、自己の債務を弁済するため乙に対してY会社名義の約束手形を振り出した。その後、乙は約束手形をXに対して裏書譲渡し、XがY会社に対して手形金を請求した場合、Xの請求は認められるか。
【考え方】
・・・代表権限濫用の効力をどのように解するかが問題となる。
→ 代表(代理)権限濫用の場合、直接の相手方が善意である限り、代表取締役(代理人)の権限濫用行為も原則として会社(本人)に有効に帰属する。
なぜなら、たとえ代表取締役(代理人)が自己または第三者の利益を図る意図で行為したとしても、「本人のためにする」意思(代理意思)とは、本人の利益を図る意図ではなく、本人に法律効果を帰属させる意思をいうから、代表取締役(代理人)そのような意思が認められる限り、代理意思に欠けることはないからである。
⇒ 特に権限濫用行為が手形行為の形式によってなされた場合、手形取引の安全を図るために権限濫用行為を有効とするべき要請は一般の法律行為の場合よりも一層強く働く。
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