憲法論文答案練習裁判所 条約と違憲審査

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    資料の原本内容

    憲法論文答案練習 裁判所
    ~条約と違憲審査~
    【問題】
     条約は、裁判所による違憲審査の対象となるのか。
    【考え方】
    ・・・憲法81条は「法律、命令、規則、処分」を挙げ、裁判所の違憲審査の対象となる旨を定める。ところが、ここに「条約」が挙げられていないことから、条約が違憲審査の対象となるか問題となる。
    1) 条約がそのまま国内法的効力を有するか。
       ①条約にそのまま国内法的効力を認める見解
       ②そのままでは国内法的効力は認められず、国内法的効力を認めるためには、いちいち立法措置が必要であるとする見解。
    2) ①を前提として、憲法と条約のどちらが形式的効力において優位するか。
     → 条約の方が形式的効力において優位するとすれば、当然、違憲審査の対象とはならなくなるが、憲法が形式的効力において優位するとしても、さらに、条約が違憲審査の対象となるかは争いがある。
       ① 憲法81条に「条約」という語句がないこと、憲法98条が条約を除いている上、98条2項で条約遵守義務が規定されていること、条約の特殊性(国家間の合意であること、政治的な内容を含むこと等)などを根拠として、否定する見解。
       ② これを否定しては憲法を形式的効力として優位するとした意味がなくなること、条約が違憲とされても国内法的効力が無効となるだけで国際法的効力まで無効とするわけではないから条約の特殊性に反しないこと、高度の政治性を有する条約については統治行為の理論で処理できること等を理由として、肯定する見解。
    【答案例】
    憲法と条約の形式的効力につき、憲法優位説を採用するにしても、条約が直ちに違憲審査の対象となるか否かについては争いがある。なぜなら、憲法81条は、「条約」を違憲審査の対象として列挙していないし、そもそも、条約が国家間の合意という特殊性を有し、かつ、きわめて政治的な内容を含むことが多いからである。
     しかしながら、条約に対する違憲審査を否定すると、憲法と実質的に抵触する法規範の存在を是認することになってしまうが、これでは、憲法が条約に形式的効力において優位するとした意味がなくなる。また、そもそも、81条の違憲審査権が、人権を擁護し憲法の最高法規性を担保する最も重要な制度であることからすれば、安易に違憲審査の対象について例外を認めるべきでない。
     他方、憲法81条が条約を明記していないのは、明文でもって違憲審査の対象とすることは国際信義上適当でないと考えたに過ぎない。条約は受容されれば、法形式としては憲法81条にいう「法律」に含まれると考えれば足りる。
     また、確かに、条約は国家間の合意という特殊性を有するが、条約が違憲であるという判断は国内法的効力について無効であるにとどまり、その国際法的効力まで無効とするものでないのであるから、条約を違憲審査の対象としたからといってその特殊性に反するわけではない。さらに高度に政治性を有する条約については、いわゆる統治行為論により処理できる。
     以上より、私は、条約も統治行為の問題は別として、原則として違憲審査の対象となると考える。

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