刑法各論論文答案練習 ~詐欺罪(キセル乗車)~
詐欺罪 ~キセル乗車~
問題
Xは、A駅からD駅まで乗車する際に、C・D駅間の定期券を持っていたので、不正乗車しようと考え、A・B駅間の乗車券を購入し、A駅改札の係員にそれを呈示して電車に乗り、D駅の出札係員に定期券を呈示して改札口を出た。Xの罪責はどうなるか。
問題点
キセル乗車とは、例えば、A駅からD駅までを乗車しようとする者が、AB駅間の乗車券のみを購入し、それをA駅の改札係員に呈示して入場・乗車し、D駅の改札係員にCD間の乗車券または定期券を呈示して出場し、BC駅間を無賃乗車することである。
詐欺罪の成立には、欺罔・錯誤・処分行為(財産的処分行為)・財物または財産上の利益の取得が、客観的には因果関係によって結ばれ、主観的には故意によって包摂されることが必要である。
そこで、キセル乗車の場合、詐欺罪の成立を満たすか(何を不当利得したか、誰に対しどのような「欺罔行為」があったか、誰がどのような処分行為をしたか)を検討する必要がある。
見解
○ 乗車駅か下車駅どちらを基準とするか?
1)乗車駅基準説(役務基準説)
この見解は、...