刑法答案 財産罪(死者の占有 親族相盗例)
1 占有の存否・死者の占有
問題:XはAを殺害した後、死体から金品を奪取する意思が生じたため、これを奪った。
〈問題の所在〉
Xには、殺人罪(刑199)が成立し、Aは死亡によって権利能力の主体では無くなるが、A殺害後、死体から金品を奪取する意思が生じてこれを奪った場合における罪責が問題となる。
〈考え方〉
ⅰ 窃盗罪説
…窃盗罪を構成する見解も2つに分かれる。
a)全体として観察して死亡直後には生前の占有が保護されるとする説
b)死者の占有それ自体が保護されるとする説
ⅱ 占有離脱物横領罪説
…被害者の死亡によって、財物の占有は客観的・主観的に失われるので、占有離脱物横領罪が成立するにとどまる、との見解
ⅲ 強盗罪説
…この見解は、自己の殺害行為によって生じた被害者が抵抗不能となった状態を利用して所持品を奪取したものであるから、強盗罪が成立する、というもの
解答
XがAを殺害した後、死体から金品を奪った行為は窃盗罪(刑235)に該当するか。窃盗罪は、他人の「占有」を侵害するという点で、占有離脱物横領罪(刑254)とは異なる本質的特徴...