1.勅法とは、元首の意思・命令で法律としての効力を有するものをいう。Leges(法律)とは後
述する経緯により勅法に付与された、総括的名称である。また、学説法 Ius とは、法学者の
見解のうち、法律としての効力を有するものをいい、法の運用・適用に必要とされた。
2.(1)元首は本来、立法権を有せず、一般の政務官と同様に告示を発し、また、民会の委任
によって法律を制定する権利を有したに過ぎなかった。しかし、元首の地位が確立されてい
くと、元首が立法権を有することは疑いのないものとなった。かくして、元首の意思・命令す
なわち勅法は、法律と同一の効力を有するに至った。
勅法には、①告示、②訓令、③裁決、④指令、という4つの形式がある。告示とは、元首が
告示権に基づいて発する告示で、他の政務官や市民に一定の行為を要求するものをいう。
訓令とは、元首が、統治を委任した官吏に対して与える、職務に関する命令をいう。裁決と
は、特別審理手続きにおいて元首またはその官吏が下した判決をいう。指令とは、官吏また
は公法上の団体から元首の元に提出されたうかがいや私人からの請願に対する、元首の解
答をいう。
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