小学校社会科の授業改善の視点について

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    「小学校社会科の授業改善の視点について、小学校指導要領(社会編)を根拠にしながら具体的に述べよ。」
     社会における児童及び生徒の周囲環境は年々変化しており、学力低下やいじめ問題・不登校問題・自殺問題などから教育に関する課題も増加の傾向を見せている。
     これを受け、1996年7月に中央教育審議会では「ゆとり」と「生きる力」をキーワードとする提言がなされた。これに伴い、横断的かつ総合的指導を推進する総合的学習の時間の創設と完全週5日制の導入が成されたのである。また、1998年7月に教育課程審議会では完全週5日制のもと、「ゆとり」の中で「特色ある教育」を展開し、児童及び生徒に「生きる力」を指導・育成する教育を実施することを基本のねらいとした4つの提言をした。
     1998年に改訂された学習指導要領のねらいはそれぞれ、「豊かな人間性や社会性、国際社会に生きる日本人としての自覚を育成する」、「自ら学び、自ら考える力を育成する」「ゆとりのある教育活動を展開する中で、基礎・基本の確実な定着を図り、個性を生かす教育を充実させる」「各学校が創意工夫を生かし特色ある教育、特色ある学校づくりを推進する」の4点とされている。これは、学習指導要領改訂の基本的視点であり、これからの学校教育の基本的な方向性を指し示すものとして、きわめて重要な要点となるものである。この基準をもとに、各学校では新たな教育課程を編成し実施していくとともに、調和性及び統一性をもった教育内容を実施していくことが望まれるのである。
     これを基本とした社会科・地理歴史科・公民科の改善の基本方針は次のようになる。
     1.小学校及び中学校・高等学校を通じて日本や世界の諸事象に関心を持ち多面的に考察し、公正に判断する能力や態度、わが国の国土や歴史に関する理解と愛情、国際協力・国際協調の精神など、日本人としての自覚を持ち、国際社会の中で主体的に生きる資質や能力を育成することを重視して内容の改善を図る。
     2.自動・生徒の発達段階を踏まえ、多学校段階の特色を一層明確にして内容の重点化を図る。また、網羅的で知識編中の学習にならないようにするとともに、社会の変化に自ら対応する能力や態度を育成する観点から、基礎的・基本的な内容に厳選し、学び方や調べ方の学習、作業的・体験的な学習や、問題解決的な学習など児童・生徒の主体的な学習を一層重視する。
     この基本方針では、児童の発達段階を考慮して社会的事象を公正に考えることや判断できるようにすることが一層求められている。また、地域社会やわが国の産業、国土、歴史などに対する理解と愛情を深め、育成することをねらいとしている。さらに、日本人としての自覚を持ち国際社会に対する関心や意欲を引き出すことで、わが国の国際社会内での役割を理解できるようにすることを目指している。
     また、網羅的で知識編中が他の学習とならないよう、社会事象や地名・年号などの細かい知識を覚える学習から、児童一人ひとりが観察・調査、体験、表現など具体的な活動を通じて社会的事象の持つ意味や働きを児童・生徒たち自身が考えることや、その考えた内容をもとに自分なりの解釈や意見を述べることができるような従業への改善が求められている。
     このような、小学校社会科で育成させたいと求められている力は、日々の授業内において育成し培われるべきものであり、これは学習指導要領の改訂のねらいの一つである「各学校の創意工夫を生かした特色ある教育、特色ある学校づくり」に相当するものであるため、各学年の目標の改善が図られている部分と関連しているものといえる。
     社会科における授業改善での大きな改善点の特徴は、学び方や調べ方の学習、作業的であり体験的でもある学習、問題解決能力を育成する学習など、児童の主体的な学習が一層重視された点であり、その主な改善内容は以下のようにまとめることができる。
    1.地域の実態を生かした学習
     従来の社会科学習においても、地域の特色ある素材を教材化することや、地域内に学習の場を設けるといった、地域の人材を積極的に活用することが図られてきた。改善後の社会科においても、これを基本とする学習方針は変わらず、より一層充実した内容とすることが必要なのである。
     そのためには、教師が地域の実態をよく把握するとともに、どのような素材が社会科において活用できるのか、どのように地域住民に協力をしてもらいながら学習展開していくのか、を明確にする必要がある。そしてこれをもとに、地域の素材を教材化し、地域住民の協力を受けながら地域施設の活用や、地域住民との触れ合いを生かした学習を展開すべきである。この具体例としては、小学校3・4年生あたりで実施する史跡めぐりや、地域住民に昔の生活内容をじかに聞く「昔体験」などが考えられる。また、「昔体験」に伴い、資料館などに訪れ昔の用具の使用方法や当時食事に用いられていた食料品を用いた食事内容を実際に味わうなども、より地域に対する理解を深めていく中で体験させておくこととして重視すべきである。1998年の学習指導要領改訂で第3学年及び第4学年の目標・内容が2学年まとめて示されたのは、各学校において地域密着型の学習を一層深め、地域社会に対する愛情と誇りを育成するためである。第5学年及び第6学年においても同様であり、地域の特性を生かした学習を展開する必要性があるが、目標と内容を各学年ごとに十分理解し、地域学習としての枠に留まらないよ、留意する必要がある。
    2.観察や調査・見学、体験の重視
     児童は活動的な学習によって一層関心と意欲を高め学習するのである。そのため、小学校社会科学習における具体的活動としては、観察や調査・見学、体験が重要とされる。
     具体例としては、第4学年あるいは第5学年において、「自動車工場見学」や「飛行場見学」「工場見学」など、実際に児童がその目で見ることや、触れるといった活動を通して学習内容を実感できるような学習活動を盛り込むべきである。
     何を自分で調べたいか、という点を児童自身が明確にし、児童それぞれに観察や調査・見学、体験の方法を身につけさせることが重要であり、「何を」「どのように」調べるのか、という点を重視することが必要となる。
     全校で理解し学習したことを表現することも重要となる。表現方法としては、絵や図、動作化、デジタル機器を用いたものなど多様な方法や手段で工夫することがある。この具体例としては、第5学年または第6学年において「歴史上の有名人物」の行った政策などを図に表し、児童なりの解釈や考察をアフタ意的に実施させることがあげられる。「徳川家康」や「織田信長」といった、歴史上重要な人物に焦点を合わせ、その人物がどのような行動を取ったのか、それによってどのような結果が生み出されたのか、などを他児童に理解させるためにはどのように表現方法を工夫する必要があるのかを、児童自ら考え気づくことで、学習内容をより発展させることが可能となるのである。
     児童が主体的に取り組めるような社会科学習を展開するには、以上の3項目に重点を置き、各学校の特色を生かした独自の内容を指導計画に盛り込むことが重要なのである。
    参考文献
    文部科学省 「小学校学習指導要領解説 社会編」 2007

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