今後の社会への対応を考慮した家庭科の学習について述べよ

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       「今後の社会への対応を考慮した家庭科の学習について述べよ。」
     現代社会において、子どもを取り巻く社会環境は日々激しく変化している。それは、片親の家庭の増加や生活保護を受ける家庭の増加、またそれらの家庭とは逆に、何一つ不自由なく育てられる家庭であっても子どもに対して過干渉及び過保護になってしまう家庭及び保護者など、その変化形態は多様性に富んでいる。このような社会の中で、小学校教育課程における全体的な目標である、「生きる力」を育む上で重要な教科となっている家庭科では、どのように社会に対応した学習活動を展開しているのか。本稿では、家庭科の目的、現代社会に対応した家庭科の学習方法について述べる。
    1. 家庭科学習の中で指導及び支援することを求められているもの
     平成20年度に改訂された小学校学習指導要領において述べられている家庭科教育の基本方針をまとめると次のようになる。まず、「家庭科教育における課題を明確にし、その課題に沿って実践的及び体験的な学習活動を実施するとともに、課題解決にむけて子どもたちが自ら工夫して学習に当たるよう支援する。その際、家族と家庭の役割や日常生活を送る中で必要となる基本的情報、衣・食・住に関する基本的理解及び技能を養うこと。」次に、「社会において子どもたちが将来的に自律した生活を送ることの出来るよう、生きるための基礎を培える教育を行うこと。」次に、「生涯の見通しをもち、自らのよりよい生活を求めるとともに生活を送るための能力や実践的態度を養えるよう、学校における教育段階に応じた体系的目標及び内容の改善を図ること。」また、「消費社会において、環境保護に努められる人間を育成するための資源及び環境に配慮した行動をとることができ、同時に自らの健康管理を万全に整えられる人間として育成すること。」最後に、「実践的・体験的な学習活動を展開し、自ら課題の本質を見出すとともに自らの思案や表現を用いて自分なりの問題解決を図ること。」この5点が現行の小学校学習指導要領によって定められた基本方針であり、これに沿った学習活動を展開することが求められている。
     しかし、従来の学習指導要領を改訂したといっても、まったく異なった形で内容が設定されていることや、180度視点及び観点を変えて設けられた点はあまりない。そんな中、まったく異なるといっても過言ではない点がいくつかある。それらの代表としてここに述べるのが、「課題の簡潔化」だと考える。これは、従来の家庭科学習においては調理する対象を学校側が指定し、子どもたち全員が一律に同じ献立を作っていたものを、新学習指導要領により調理対象を教師や子どもが自由に設定し、主体性を持って調理に当たることが可能となった、というものである。これにより、子どもが自ら考え判断し主体性を持って行動できるようになった反面、教師側は明確かつ学習意欲を引き出せるようシンプルな設題をしなければならなくなり、教材の事前研究がよりいっそう重要となったのである。
     こうした小学校学習指導要領の改訂を受け、より実践的で子どもが主体的に学習できるような環境配備も家庭科教育における要点となった。
    2. 現代社会での生活に対応した家庭科の学習方法
     現代社会における子どもたちは、自ら調理をすることもままならなくなっており、また裁縫や資源の再利用などにいたっては「何でわざわざそんなことをしなければならないのか」とまで感じている子どもが多く見られる。この背景には、共働きの家庭が増加し家庭内で家族と食事をする機会が減少していること、また放課後はまっすぐ塾に通うために夕飯は家族とではなく、友達と取ることがほとんど当然となっていること、さらに料理や家事を両親がほとんど行っており自らは食事をとるのみで「手伝う」という概念が存在していないこと、などが考えられる。近年の子どもには特に外食傾向が強く感じられ、家庭内において食卓を家族とともに囲むこともあまりない子どももいるのである。その理由として、疑似体験や間接体験が増加する中で従来の子どもが行っていた「手伝い」をする機会も減り、その結果自分の身の回りや食事・洗濯なども親が全て行う、といった状況につながってしまっているのだといえる。そのため、料理の名前は知識として知っていてもいざ「調理方法」「必要な食材」と問われると、何が必要でどのような手順で調理すればよいのかまったく分からない、という状態になってしまうのである。
     こうした子どもたちの現状を打破し、日常生活に必要な技能及び知識を習得させる教科が家庭科となっている。家庭科において生活を送る上で必要となる知識及び技能を子どもたちの身につけさせるためには、何よりも子どもたち自身の家庭科に対する「興味・関心・学習意欲」を引き出さなければならない。
    日ごろ家庭内の生活に興味を示そうとしない子どもたちに、家庭科学習に対する興味・関心・学習意欲を持たせることは一見困難なことにも思えるが、子どもたちは興味を示さないのではなく、どのようにして家庭内生活の場における「手伝い」「調理補助」といった立場につけばよいのか分からないことのほうが多いため、あと一歩が踏み出せないままになってしまうのである。そうした状況を改善するためには、子どもが興味を抱きやすい「食事」に関する単元などを中心に、一人ひとりが活躍する場を設け与えることが大切になる。そのため、まずは子どもの身の回りの生活環境に目を向けさせ、普段何気なく口にしている食事がどのようにして調理されているのか、また着ている服や持ち物を入れるナップザックはどのようにして作られているのか、など子どもにとって身近な課題設定をはじめに行い、そこから学習活動を展開していけばよいのである。日常生活に必要な知識や技能の習得も重要であり、また問題追究及び解決する能力の育成も重要である。しかし、子どもの成長を支援する上で何が必要かと考えたとき、まず子どもに習得させたいのは知識でも技能でもその他の能力でもなく、「自らの生活に対する興味・関心・意欲」と、「自らがまた友達とともにものを作り上げたときの感動や喜び」、この2つが何よりも先にくるべきものであると考えられる。そのため、教師は子どもが主体的に学ぶことの出来る環境を作り上げるとともに、子どもたちの個性やその生活体系に見合った学習展開をしなければならないのである。
    3. まとめ
     現代社会では、子どもたちを取り巻く環境はめまぐるしく変化しており、その環境に適応しようとすることの困難さは子どもにとってもまた大人にとってもそう大差のあるものではない。しかし、だからといって社会に適応できる人間の育成をあきらめてしまうのではなく、「今」を生きてきた大人が、「これから」を生きようとしている子どもたちに何を教えるべきなのか、また何を伝えなければならないのかを認識しなければ、育てることなど不可能となる。そのため、教師は学習を通して伝えるべきことをよく認識し、学習活動を行わなければいけないのである。
    参考文献
    橋本都編著 「小学校学習指導要領の展開」 明治図書

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