「学校教育における生徒指導の意義や役割及びガイダンスの機能の充実によるこれからの生徒指導について述べよ。」
現代社会において、子供同士のいじめや不登校、さらにそこから発展した自殺問題など、子どもをめぐる社会問題が新聞やニュースに取り上げられないことはない。これらの問題に対し、積極的に支援できる立場にあるのが生徒指導である。本稿では、この生徒指導の意義・役割・ガイダンス機能についてまとめながら以下のように述べることとする。
生徒指導とは、子どもの成長や発達段階などの個人差に配慮し、子どもの持つそれぞれの個性や自主性を子ども同士が相互に尊重し合いながら生活できるよう、支援する機能を持った指導法である。この生徒指導における意義は、小学校・中学校・高等学校学習指導要領において、次のように述べられている。
小学校においては、学級経営を充実なものとし豊富な活動展開が可能となるよう、調整を行った上で教師及び児童間の人間関係の良好な形成を実施することが意義とされている。
中学校及び高等学校においては、生徒に対する理解を深め、生徒が自分自身の自主性や個性を尊重した行動をとれるよう、協力及び支援活動を展開すること、と述べられている。
上記の学校機関における意義からみられる生徒指導の前提条件としては、①教師及び児童生徒の人間関係及び信頼関係の形成、②制度相互の人間関係づくり、③児童生徒それぞれの理解、がありこれらが生徒指導を展開する上で重要とされている。また、これらを基盤として生み出された学習のねらいは、自主的に児童生徒が判断や行動を行い、自己を生かすことの出来るよう自己指導能力を育成すると共に、能力や態度のあり方を社会に適応できるものへと成長させられるよう支援することにある、といえる。
生徒指導は、各教科・特別活動・道徳、総合的な学習の時間に対し総合的関連性を持ち、教師がそれぞれの学習時間内において実施すべきである、とされており、その中で児童生徒の自主性及び個性を伸ばすとともに、社会性や自己実現能力、自己実現能力を育成することが、その役割であるといえる。上記のうち「自己指導能力」を育成する際に留意すべき点としては次のように述べることが出来る。
1. 児童生徒が学校生活の中で、自己の存在意義を見出し能力を生かすことの出来る集団生活づくり、どのような人間であっても学校内の一員であると認識し教師が常に児童生徒と向き合う姿勢をとる。
2. 教師と生徒、生徒同士が対等な人間であると認識した上で良好な関係を持ち、互いを尊重しながら相手に対する理解を深める。
3. 生徒が自分自身で物事を決定できるような場を与え、自己の可能性の拡大及び発展が行えるよう支援する。
上記の3点以外にも、生徒が自らの決定及び行動に責任を持つことが可能となるよう支援を行うことや、指導を取り入れることが必要とされている。
次に、実際の生徒指導のあり方について述べることとする。ここでは、ガイダンス機能について、また自身の体験した生徒指導をもとにこれからの指導のあり方について述べたい。
学習指導要領において、生徒指導を改善・充実させるためのあり方を示した「ガイダンス機能の充実」が新設された。このガイダンス機能の充実について、中学校学習指導要領の「総則」では「生徒が学校や学級における生活に適応するとともに、現在や将来の事故の生き方を考えて行動できるような態度や能力を育成できるよう、教育活動全体を通じてガイダンス機能の充実を図ること」とされている。
また、これに関連して「特別活動」では、「お学校生活への適応や人間関係の形成、進路などの指導に対して、ガイダンスなどの機能が充実するよう、学級活動の指導を工夫する」、とされている。これらから、学校生活におけるガイダンスに求められているのは、次の4点であるといえる。
①集団生活に適応できる能力の育成
②人間関係の形成のための能力育成
③現在及び将来において、自己の人間としてのあり方や生き方を考えられる能力及び態度の育成
④選択教科や進路選択などを自己の判断で決定できる能力及び態度の育成
これら4点の役割の意図としては、不登校や学校生活に不適応とされている子どもたちのように、「上手になじめない」、「人間関係が築けない」、「気力がない」、「孤立感及び劣等感がある」、といった存在が学校教育の中で次第に大きくなってきたことが要因として上げられる。この意図を理解し、学校という一つの集団生活内での個々のあり方に対し、学校としての指導及び援助活動を展開することがガイダンス機能の充実につながるのである。
生徒指導において、これからの課題及び目標となるのが「積極的な生活指導」「生徒の非行対策」である。この課題及び目標について、自身が高校生活において実際に体験した活動から、生徒指導達成までの経緯を述べていくこととする。
自身の出身高校では、教師が生徒に対して生徒指導を実施する一般的な学校とは異なり、「生徒会」及び「各部長会」が一般生徒に対して生活指導を行っている。生徒会とは、一般生徒から投票で選出されたもので、多幸の生徒会と同等のものであるが、各部長会はそれぞれ運動部・文化部の部長及び副部長によって構成されているものである。
わが出身高校における校則は、毎年多少の変化を見せており各自着の生徒会及び部長会が草案をまとめ、それをもとに全校集会において「一般生徒」「各教師」「生徒会及び部長会」 の三者に分かれ、賛否意見を出し合い最終決定をそれぞれ投票によって行う、といった経緯で定められている。ここでは、自由な意見及び各生徒の学校生活をよりよいものとするための改善策を各自実行することが可能となるよう、学校内の全ての人間の言葉を取り入れることがなされている。
もちろん中には、「校内及び教室内の喫煙飲酒解禁」「学校内施設の一般開放」といった意見も出てくるが、これらが校則の一部となることはない。この理由として、定時制高校に通う生徒のほとんどは、学ぶために入学した者であり、社会生活における非常識を本気で意見として捉える者もいなかったことや、各学級に配備されたクラス委員が学級内の意見をあらかじめまとめた状態とし全校集会に臨んでいたため、あまりにも幼稚で用いようのない意見はあらかじめ抹消していたこと、などがあげられる。
また、校則を生徒が把握しているか、守ろうとしているかを見極める風紀の仕事にも教師ではなく、「生徒会及び部長会」が指導に当たる。そのため、指導に当たる生徒には「指導能力及び態度や自己指導能力」が、また指導される生徒には「社会に適応する能力及び態度」がそれぞれ育成されるようになる。指導問題が大きなものであった場合、教師と連携をとり指導に当たるとともに、全校集会で「なぜ問題が起きたのか」「今後同様の問題が発生した場合、どのような行動及び態度をとり問題となるのを防ぐべきか」、などを3者に分かれ議論・反省することで次回以降の指導につなげる、といった体制を用いている。
以上の自己体験から考えられるこれからの生徒指導のあり方とは、「自己指導能力」を各生徒の中に育てられるような場を設けるとともに、教師自身も生徒と連携をとり、相互間で信頼関係を築きながら、責任を持った行動に当たれるよう改善していくことにある、と考えられる。