ルソーの教育思想について述べよ。
ルソーの教育思想を述べるに当たって、まず彼の生涯を振り返ってみることから考察したい。
ルソーの生まれは、ジュネーブの貧しい時計職人の家であり、生後間もなく母親と死別していたため、ほとんど組織的な学校教育を受けることなしに独学で文字をおぼえたと言われている。また父とも離別し孤児となり、16才の時にジュネーブを経ち放浪生活を余儀なくされたとされる。17才の時にヴァラン夫人の元へ赴き、そこで世話を受けたことが彼の人生経験や社会観を育てることとなった。そして、20代で病をえた時、禍を福にかえ、ヴォルテールやデカルト、モンテーニュ、ロックなど、注目されていた著作に目を通し、基礎的教養を身につけた。その後、女中テレーズとの間に5人の子どもをもうけるが、すべて養育院へ送り孤児にする。彼が最初に注目されるきっかけとなったのが、1747年ディジョン・アカデミーの懸賞論文『学問芸術論』の当選である。ほかにも1755年の『人間不平等起源論』の執筆がある。しかしこれらは、時代批評やカトリック教会批判は圧迫を招き、故郷を離れ、目立たぬ生活をしながら『社会契約論』や『エミー...