w0773 相談援助の基盤と専門職 ②

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    資料紹介

    資料の原本内容

     「ソーシャルワークにおける専門分化と統合化の歴史的推移とその内容について述べよ。」
     ソーシャルワークの形成過程
     ソーシャルワークの起源は、宗教的慈善が発展し福祉の原動力であったが、ここでの福祉は全ての人の最低生活を保障する社会制度としての援助ではなかった。
    1860年代、ロンドンでCOS(慈善組織協会)が設立される。COSは、自由主義、個人主義をモットーに社会改良を目的として活動し、隣人愛に基づく援助から発展し、民間の社会奉仕団体として発足された。COSはケースワークの実践に基づく理論と方法、技術を確立した。
    また、知識や財産を持つ者がスラム街に住み、社会的弱者や生活困窮者と生活し、人間的接触を通じて地域の社会福祉向上を図ったセツルメント運動が展開される。社会問題を社会科学的分析による福祉ニーズを捉え、社会制度整備につなげ、今日のグループワークとコミュニティワークに影響を与えたとされる。
    ソーシャルワークの確立期
    1910年代になると「社会診断」(1917年)の著者で「ケースワークの母」リッチモンドである。援助者個人の倫理観、経験、技術等に依存したソーシャルワークを今日の専門的・科学的枠組みを体系化し、社会的診断を導き出す過程として定義され、ケースワークは社会的要因や社会的環境と個人との関連に重点を置きケースワークの発展に努めた。
     1920年代では、セツルメント活動、COS活動等が発展してくると、ソーシャルワークが細分化、専門化していく。それぞれの場に相応しい方法論を確立し、その方法論だけを教育する専門職化が求められた。ソーシャルワークの方法・技術の深化と分化に伴い、専門性の乖離が進行し、ソーシャルワークのアイデンティテが失われつつあるも、実践者の中には一つの専門職としてのまとまり求める動きもあった。その代表的なものにミルフォード会議がある。この会議では共通基盤が明確化されたのが最大の成果とされる。1920年代のソーシャルワークは、①社会科学や医学等の諸領域からの影響、②ケースワークにおける統計的方法と事例研究的方法におけるクライエントの理解、③精神医学の影響を受けた事が特徴としてあげられる。
     1930年代にはソーシャルワーク・グループワークにも専門化の兆しが表れ、ソーシャルワーカーの介護は問題中心から技術中心へと変化した。
     ソーシャルワークの展開・発展期
     1940年代に入ると、様々な形で家族は分断され、家族基盤は脆弱となる。この脆弱さはソーシャルワークを必要としソーシャルワークはこれを機会に発展していく。そして診断主義学派と機能主義学派の対立が発生する。
     診断主義学派は1920年代に登場したフロイトの精神分析理論を基盤にハミルトンらが、幼児期の体験が人格形成に影響するとし過去を重要視し、クライエントの無意識化にある者を意識化させ、治療的に援助した。一方機能主義学派は、1930年代に登場し、ランクの意思心理学を基盤に、タフトとロビンソンが人間を生物学的な人間観のみでなく、精神性と創造性に着目しフロイトの過去を否定し、「現在」に焦点をあて、クライエントが主体的に諸機関の機能を活用できるよう支援をしている。
     1950年代になると2つの学派の折衷案であるパールマンの「問題解決アプローチ」が登場する。「人生とは問題解決の過程であり、人が問題を抱えている事は決して特異な事ではない」と提唱し、問題解決の主体は利用者自身であるとした。このような研究を通して、ケースワークの存在意義を問い直し、その結果心理学主義から人々の生き辛さや生活のし辛さを生み出す「社会的要因」への視点を取り戻し、社会的弱者の権利擁護や制度・施策等を含めた社会資源の開発・改善を目指す活動を重視する実践及び方法・技術へと展開していく。
     しかしその後、ソーシャルワークモデルが乱立する。まずホリスによる「状況の中の人」に焦点を当てる心理社会的アプローチ、次に学習理論でクライエントが問題とする行動を変える行動変容アプローチ、そして危機状態に介入する危機介入アプローチ、クライエントが認めた問題だけを短期間援助する課題中心アプローチ、さらにジャーメインによる生態学的アプローチである。
     ソーシャルワークの統合化とジェネラリストソーシャルワークの成立
     ソーシャルワークの統合化とはソーシャルワークの共通基盤で、主要な3方法であるケースワーク、グループワーク、コミュニティワークの共通基盤を明らかにし、一体化して捉える一連の動向のことである。ソーシャルワークの統合化された背景には3つの要因がある。それは複雑化、深刻化する生活問題にソーシャルワーカーが対応できなく成りつつあった事、ソーシャルワークシステム理論が導入された事、ソーシャルワーカーのアイデンティティを高めて行くことである。
    ソーシャルワークの統合化の過程の第1段階はコンビネーションアプローチである。上記の3方法を単純に合体させたもので、ソーシャルワーカーがクライエントへの援助内容に応じ、最も適切なものを組み合わせ活用するもので、1900年代の考え方である。1920年代には第2段階のマルチメソッドアプローチがあり、これは第1段階と同じ考えだが、書く方法論に共通基盤を確立した点が特徴とされる。1970年代には以上の背景から第3ジェネラリストアプローチが登場する。これは共通基盤を理論的に成熟させ、3方法に立脚して捉えなおそうとするものである。さらに1990年代に第3段階までの3方法がソーシャルワークとして融合し、それまでの共通基盤とも一体化してジェネラリストソーシャルワークが誕生した。そして現在のソーシャルワークはこの考え方が基盤となっている。
    総合的かつ包括的な援助の必要性
    ジェネラリストソーシャルワークが最も活用されるのが地域福祉である。地域福祉を推進するソーシャルワークには従来のケースワーク、グループワーク、コミュニティワークといった縦割り且つ、単一の方法論にとらわれず、ジェネラリストとして地域において個人や家族の自立生活や主体形成への支援を中心に、様々な社会資源を有機的に活用し、それを可能にするための環境醸成やシステム構築、地域福祉計画策定などを総合的に展開していく事ができる。また、これらをソーシャルワーク実践の中に意識的に位置づけ、個別援助業務と関連付けながら取り組む必要がある。
    これは地域において何かしら生活課題を抱える人々へのニーズの把握―アセスメント―目標計画―評価といったミクロ(個人)的個別援助か手に地域諸資源の創出、ネットワーキングといった個別的援助過程で必要となり、メゾ、マクロ(集団、地域)的援助業務を展開する事ができる。
    地域福祉を推進するソーシャルワークを展開する為には、ミクロ(個人)視点だけではなく、メゾ・マクロ(集団・地域)視点を併せ持ち、方法論的縦割りを超越し、対象別分野の垣根を取り払う必要があり、総合的かつ包括的な相談援助の担い手としてソーシャルワーカーが地域に根付いた社会福祉の専門職として認知される事が今後の課題であると考える。
    参考著書
    『新社会福祉援助の共通基盤 下』
    社団法人日本社会福祉会 編集
    2009年4月
    中央法規
    『現代の社会福祉養成シリーズ
    相談援助の基盤と専門職』
    相澤 譲治・杉本 敏夫 編著
    2009年4月
    久美株式会社
    W0773  相談援助の基盤と専門職  第2設題
    09413-10175   徳田 順子
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