社会福祉方法原論② 

閲覧数2,765
ダウンロード数122
履歴確認

    • ページ数 : 7ページ
    • 全体公開

    資料の原本内容

     「利用者の生涯にわたる発達と地域生活を豊かなもの
    にするために、利用契約制度の下でのケアマネジメント
    の意義と役割、その方法論的な課題について論述せよ。」
     1、ケアマネジメントとは
    ケアマネジメントという用語の定義を巡っては様々あるが、1970年代のアメリカでの精神障害所のコミュニティケアを実施するために、ケースマネージャーを配置し、
    諸サービスをサービス供給機関から供給させる方法で、サービスの効果的供給を目指し、ケースマネジメントという名称で始まった。イギリスでは、1990年にコミュニケア法が制定され、ケアマネジメントが制度化された。イギリスのD.チャリスは、「脱施設化」による地域サービスの散財や利用者からのアクセスの困難性、インフォーマルな支援とフォーマルな支援を組み合わせるなど、高齢者ケアへの社会的要請を背景に登場したと指摘し、D.マクスリーは対人サービスや機会や給付の調整を促進するための利用者の立場に立つ方法であると提起し、その効果についても、①機関の範囲を超えたサービスを統合することと、②ケアの継続性を達成することである
    とした。いずれの定義もサービス調整の効果的な実践に主眼を置いたものであり、ケアマネジメントは、技法や構造、家庭など原則的にケースワークの方法を援用し、クライエントの援助を在宅中心に展開しようとする、インフォーマル、フォーマル双方の社会資源を地域レベルで把握、併用し、結合させて支援しようとするもので、コミュニティーワークに接近した方法である事が特徴と言える。
     2、日本におけるケアマネジメント
    日本では社会福祉方法論の技法のひとつとして、1994年に高齢者福祉の分野で「新たな高齢者介護しシステムのこうちくをめざして」でケースマネジメントという用語で使われ始め、1997年の老人保健福祉審議会の「新たな高齢者介護制度について」を提案し、様々な社会資源を活用しながら、ケア担当者が利用者側の立場に立ち、本人や家族のニーズを的確に把握し、その結果をふまえ、ケアチームを構成し、関係者と一緒にケアの基本方針である、ケアプランを策定し実行するシステムとして、在宅ケア推進の有効な方法と位置付け、介護保険制度の施行に伴いケアマネジメントを行う専門職として、介護支援専門員という資格が創設され、2003年には支援費制度にこの仕組みが導入された。これらは、高齢者領域のみならず、身体障害、精神障害、知的障害の障害者の領域、最近では、児童虐待の分野にも応用されるなど、重要性は高まっている。
    しかし、介護保険制度の見直しや障害者自立支援法の施行に見られる社会保障・社会福祉制度の理念の変化や新しい仕組みへの移行は、利用者・家族の暮らしに大きな影響をもたらし、利用契約制度の仕組みは、職員が利用者との信頼関係をベースに生活課題を共有する事を困難にし、福祉専門職の専門性の発揮を妨げている。めまぐるしく変化する制度・政策に引きずられ、援助実践がその本来の機能を発揮し、対象とする人々の暮らしや生活問題と向かい合えない状況が生み出されているのも現実である。
     3、ケアマネジメントの目的
    ケアマネジメントの目的は、利用者の地域生活を支援することで、単に、サービスを寄せ集め、利用者に提供したり、経費を節約し効率的な社会福祉援助活動を行うことだけでなく、様々な種類の支援を適切に組み合わせ、一揃いのパッケージとして提供し、利用者の能力が高まり、最終的に自立的な生活ができるように援助し、利用者のQOLをいかに高めていくことができるかが重要となってくる。しかし、介護保険に見るケアマネジメントの手法は、経費の節約によるコストコントロールに主眼を置き、支給限度額の範囲でサービスをやりくりする技法に変質してしまう。介護保険をはじめとする制度に限定された、ケアマネジメントを行う場合、対象者を中心とする立場に立つことを忘れないという専門性が非常に重要となる。利用者との信頼関係を構築し、利用者との共同作業で問題解決を目指すというソーシャルワークの技法が必要である。さらに、問題解決を目指す過程において、関係機関や各専門職等、支援者のネットワークを広げ、連携することが大事で、ケアマネジメントに求められる機能は、ソーシャルワーク機能そのものであるという事がわかる。
     4、ケアマネジメントの過程と実践
    ケアマネジメントの実践の上で、ソーシャルワークの様々な技法の中の社会資源を有効活用し、利用者中心として目標設定し計画的な支援を行うこと、支援者が連携することなどを必須の手法として特化し発展してきた。また、ケアマネジメントの実践で大事なこととして、①個別性の重視、②利用者のニーズの優先、③生活主体者としてQOLの重視、④利用者自身の問題解決能力の向上(エンパワメント)、⑤自己決定を中心にした自立の考え方、⑥利用者の権利擁護である。介護保険制度や障害者自立支援法において、利用者が複数の事業者からサービスの提供を受ける。個別支援者は、地域における利用者のより豊かな生活保障を目指し、あらゆる生活場面でのサービス利用を統合し、一人ひとりの利用者の生活により添い必要な生活ニーズを明らかにし、家族支援も含め総合的な生活支援を展開し、ケアマネジメントを支える、地域福祉・保健・医療・就労などのネットワーク、支援システムを構築していくことが重要であり、課題でもある。 
    また、援助展開過程について、いくつかの考えがある。イギリスのJ.オームは①ニーズの確認、②ケアニーズのアセスメント、③ケア供給計画の立案と確保、④提供されるケアの質の監視、⑤ニーズの再検討とし、また、日本の白澤政和は①入口、②アセスメント、③ケースの目標設定とケアプランの作成、④ケアプランの実施、⑤要援護者及びケア提供状況についての監視及びフォローアップ、⑥再アセスメント、⑦終結という援助の過程を求めている。どの過程も、援助に当たる多くの専門家が協力し合い、効果的で効率の良い活動を行うための過程であるという事を前提に、利用者の状況は絶えず変化し、ケアマネジメントは、ニーズに沿ってサービスを調整・提供するのが主なねらいで、ケアマネジメントは利用者の参加を原則とし、絶えず利用者やその家族の主体性を尊重し、十分に相談しながらこれらの過程を繰り返し進めていくことが大事である。
    ケアマネジメントとソーシャルワークは利用者を中心とし援助技術という点、問題解決のために本人が本来持つ力を発揮し、自分らしい生活を実現できるように援助するという、エンパワメント、ストレングスの視点に立脚した、生活モデルのアプローチである事、その援助における価値や倫理、専門知識、技術についても、援助過程や構造においても、ほぼ共通であるという事がわかる。さらに、アボドガシーへの関心の高まりやソーシャル・アクションなどはソーシャルワークで欠かせない領域であり、ソーシャルワークという総論的実践概念の一部を構成する各論的実践概念がケアマネジメントである。
    ケアマネジメント援助プロセスを通し、ケアマネジメントとは、対象者との信頼関係を築きながらその代弁者・権利擁護者という立場から、対象者の生活の質の向上と生活の継続性が図れるように保障していかなければならないと考えられる。
    参考著書
    『新版・社会福祉学習双書2008 
    8 社会福祉援助技術論』第5版
    2008年 社会福祉法人 全国社会福祉協議会
    文中の下線部、上記書より引用す。
    文中の網掛け、社会福祉方法原論の展開より
    引用す。
    (3)

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。