『EU統合はそこに暮らす人々、ひいては世界の人々の幸福にどのような貢献を果たすと考えられるか。またそれがもつジレンマとは何か。もっとも基本的な目的と具体的な発現状況を要約して述べよ。』
EUは、「欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)」、「ヨーロッパ経済共同体(EEC)」、「ヨーロッパ原子力共同体(EURATOM)」の3機関が統合した「欧州共同体(EC)」を母体とし、1992年の「ヨーロッパ連合条約(マーストリヒト条約)」調印を経て、1993年に発足した。現在27の加盟国を有しており、ヨーロッパ内での政治、経済、外交、軍事など様々な側面における統合をねらいとしている。
EU統合の最も重要な目的は、不戦共同体としての平和維持とその確立である。古来より戦争の絶えなかったヨーロッパの歴史、および普仏戦争や二度の世界大戦などの反省から、暴力と戦争を否定し、和解と平和、そして共生へと、建設的な方向に態度を全面的に転換させた結果が現在のEUの姿であるとも言える。EU設立の直接的な基盤となっているのは、西ドイツ-フランス間に頻発していた石炭・鉄鋼をめぐる紛争を回避するため、1952年に設立されたECSCであ...