ロックは母親を早くに亡くし、女性からの感化をほとんど受けていない。父親は幼児期は厳格であったが、長ずるに従って穏やかな態度に変化していき、ロックに多くの自由を与え全く友人として遇するようになり、教育に対してはきわめて熱心で深い注意と関心を払ったのである。このような父親の態度が、ロックの教育思想に深い影響を与えた。ロックは、14歳でウエストミンスター・スクールに入学し、20歳でオックスフォード大学に進んでいる。同大学で、当初は神学を学び、のちにギリシャ哲学をはじめデカルトの哲学も習得するようになり、医学や自然科学についても研究を行っていった。
ロックの主要著書としては『人間悟性論』、『教育論』(『教育に関する考察』、『教育に関する若干の(一)考察』)を挙げることができる。『人間悟性論』は哲学に関するもので、経験論の思想が展開されている。『教育論』(1693)の中で、彼は人間の心は初めは「白紙」(タブラ・ラサ tabula rasa)であって何の概念ももっていないと主張し、思考の全ては経験によって得られると説いている。子どもは成長するにつれて、教育によってさまざまな概念を獲得するようになるのであり、これは経験主義的な考えと言い得る。すなわち、教育上必要なことは、学習した内容よりもその過程である。