正義が道徳上の徳目のうちで、特に法とかかわりの深いものであることは古くから認められている。しかし、法と正義がどのような形でかかわりあうのかについては、正義の観念が多様であることもあって、必ずしも広範な一致があるわけではない。
法の価値は正義を実現することにあり、法による正義の実現にはさまざまな側面がある。それでは、正義理念のどのような捉え方にもとづき、どのような法秩序を形成していくべきか。
法と正義
正義が道徳上の徳目のうちで、特に法とかかわりの深いものであることは古くから認められている。しかし、法と正義がどのような形でかかわりあうのかについては、正義の観念が多様であることもあって、必ずしも広範な一致があるわけではない。
法の価値は正義を実現することにあり、法による正義の実現にはさまざまな側面がある。それでは、正義理念のどのような捉え方にもとづき、どのような法秩序を形成していくべきか。
今日の福祉国家において、法による公共利益の確保は重要な課題の一つとなっているが、その際に採られるべき基本的な考え方には、個人の人権を重視するものから社会全体の利益を優先させるものまでさまざまである。ここでは、公共的利益についての功利主義の捉え方を見たあと、功利主義的思考が如実に現れるハリスの臓器くじを例にとって、功利主義の妥当性を検討し、福祉国家において、法律家はどのように活動すべきかを考える。
まず、功利主義は「最大多数の最大幸福」を正しさの判断基準とする。より多くの人々により大きな幸福をもたらすことを目標とし、法制度や法的決定は、採りうる選択肢の中で最も効用の高いもの、すなわち...