3-1 近代憲法成立の史的背景と原則
3-2 憲法21条1項の保障する表現の自由
222 法学3-1 3-2
3-1 近代憲法成立の史的背景と原則
近代憲法は、西洋において16世紀以来、政治的勢力としての実力を蓄えてきた近代市民
階級が専制君主を打倒する17~18世紀の近代市民革命を通じて形成・発展してきた憲法で
ある。歴史上、近代憲法を最も早く実現したのはイギリスであり、各国の憲法にその影響
を及ぼしたという意味においてイギリスは立憲主義の母国として知られている。後にアメ
リカやフランスなどの国々が近代憲法を実現させていくのである。しかしイギリスは、他
国々成文憲法典の制定によって初めて近代憲法を実現させたのに対して、中世以来、一貫
して不文憲法を保持・発展させるという改革的保守主義によって徐々に近代憲法の諸原理
を確立してきたという特異な点を有する。イギリスが近代立憲主義の基本原理を確立した
のは、名誉革命による1689年の権利章典であるとされている。すなわち権利章典によって、
イギリスは君主の恣意的支配を制約し、イギリス人の権利と自由を擁護するという近代憲
法の原理を確立したのである。しかし権利章典は、決して抽象的理念を突然に表明したも
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