世界中で読み親しまれているグリム童話は、二人の優れたドイツ学者グリム兄弟が一九世紀ドイツの一地方を中心に学問的意図から編集した民話集であり、グリム兄弟が創作したものではなく、グリム兄弟によって集められた「子どもと家庭のための童話集」である。
裁判官フィリップ・ヴィルヘルム・グリムとその妻ドロテーアとの間の九人の子供のうち三人は、生後間もなく死亡しており、成人したグリム兄弟は男五人、女一人であったが、「グリム兄弟」というときは、上のヤーコプと二番目のヴィルヘルムのことを指す。
一七九一年フィリップ・グリムの一家はハーナウからシュタイナウへ引っ越した。一家は五年後には、父親のあまりにも早い死によって、窮地に陥っている。
グリム兄弟は早くに夫を失った母を父に代わって助け、その母も兄弟がまだ十分に独り立ちできないうちに死んだので、四人の兄弟に対し非常に困難な中、強いヤーコプは父の役を、優しいヴィルヘルムは母の役をつとめ、家族を養っていかなければならないという重荷を引き受けた。
一八二五年になり、ヴィルヘルムは自己の家庭を持つが、一方のヤーコプは一生結婚しないで終わった。
さて、「グ...