「教育を受ける権利」が法的に保証されたことの歴史的な意義を考えていきたい。「教育を受ける権利」は第2次世界大戦後の昭和21年(1946)に公布された日本国憲法の第26条において、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と明記され、条文化された。
戦前における日本の教育制度は、明治維新後の、明治5年(1872)に近代教育制度の始まりとして、「学制」が公布され、制度上すべての国民に初歩的な普通教育を教授する初等教育機関が設けられた。それ以前にも寺小屋や藩校が教育を行なっていたが、「学制」による、全国への学校の配置は、政府が設けた教育を行なう公的機関であり、これにより公教育の制度が始まった。その後、明治12年(1879)公布の教育令や、明治19年(1886)公布の小学校令などで、近代教育制度は整えられていく。しかし、明治憲法においては、「教育を受ける権利」を保障する明文規定はなく、戦前の教育制度は、明治23年(1890)に発表された、「教育勅語」を中心とする、天皇主権の全体主義国家的思想による強い支配があった。「教育勅語」には、「一旦...