1.まず、外形が完成した建設中の建物が建物として認められるのかが問題となる。この点、建物として登記をなすには完成した建物でなくてもよく、まだ床・天井を備えなくても、屋根をふき荒壁をつけ一個の建造物として存在するに至れば十分である(大判昭10・10・1)という判例の趣旨に照らして考慮すれば、本問の建物はほぼ外形が完成された状態であり、建物として認められると解する。
2.次に、Cが主張している土地に関しての商人間の留置権が問題となる。ここで留置権とは、他人の物の占有者が、その物に関して生じた債権を有するときに、その債権の弁済を受けるまでそのものを留置しておくことのできる法定担保物権をいう。民事上の留置権が成立する要件として、①債権と物との牽連性②債権が弁済期にあること(民法295条1項)③留置権者が他人の物を占有していること④占有が不法行為によって始まったものでないこと(民法295条2項)が挙げられる。商事留置権(商法521条)との相違点は、①商人間の留置権には、民事留置権に必要な被担保債権と目的物との間の個別的牽連性は不要②留置する目的物は、商人間の留置権の場合、債権者と債務者との間...