§1.生命というシステム
科学とは、自然の仕組み・からくりであり、対象は生き物である。広辞苑では、「体系的であり、経験的に実証可能な知識。物理学・化学・生物学などの自然科学が科学の典型であるとされるが、経済学・法学などの社会学、心理学・言語学などの人間科学もある」と載っている。生命というシステムは、理解しようとすればたくさんの関係が必要となり、再現性のある実験による検証は直接検証することが困難なのであいまいさが残り、それが科学者をためらわせる要因となっている。科学者というのは、専門分野のなかで自分のテーマを限定するということをしているので、現役の科学者が生命について研究するというのは少ない。そういう意味では、生命はもっとも難しい学問であり、あまり知られていないことが多いものだとわたしは思う。
生命システムを理解するのに有効なのは、①その役割(機能)は何か。②その機能を実現するための構造あるいは仕組み(メカニズム)は何か。③生命システムはどのように形成(個体発生)させるのか、またどのように進化(系統発生)してきたのか。④その生物学的意味は何か。なぜこれらが有効かというと、自然発生し...