澤登俊雄 『現代社会とパターナリズム』 (ゆみる出版1997年)
本書は、「自由社会」という現代社会における「パターナリズム論」の正当性を議論するものである。自由社会では、個人が尊重され、その自由に対し正当理由なしに侵害・干渉(介入)を受けない権利を持つとされている。そのような中で、親は子どもに、学校(教師)は生徒に、そして国家は個人に「保護」という名目で干渉(介入)をし、自由に一定の制約を加えることがみられる。そのような干渉(介入)が許される根拠は何かということについて、憲法学、家族学、刑法学、そして政治学の各側面から検討をしたものである。
概要
第1章「パターナリズムとは何か」では、①干渉の理由を5類型(1)侵害原理(2)不快原理(3)モラリズム(4)集団的利益のため(5)パターナリズムとして紹介し、親切や思いやり、善意、義務感等をパターナリズムの源と述べている。そして、②パターナリズムの概念に関する論争をP.デヴリンとH.A.L.ハートの対立及び、G.ドゥオーキンの解釈、J.クライニッヒの概念を紹介し、日本では、中村直美氏や田中成明氏の見解を紹介している。また③パターナリズムの...