「美しい」と「きれいだ」について、意味の類似点と相違点を述べよ。
はじめに
言語では、身近な表現のなかでも、同じ事柄を言い表すのに複数の表現が存在する場合がある。この現象は「ことばのゆれ」と呼ばれるものであるが、「美しい」と「きれいだ」のように、美的観念や抽象的なものを表す言葉の場合はこの「ことばのゆれ」のふれ幅が大きくなる。
本レポートでは「美しい」と「きれいだ」の意味と用例を比較し、その類似点、相違点を明らかにしたうえで、円滑なコミュニケーションにとって重要なことは何かということを考える。
Ⅰ「美しい」と「きれいだ」の意味と用例
1「美しい」の意味と用例
「美しい」という語は美を表す最も一般的な語であるが、美的であるものに対する単なる客観的な描写ではなく、その意味には主観的な感動が暗示されている。したがって、同じ対象についても、受け取る側の見方によって「美しい」かそうでないかが決まってくる場合がある。「美しい」はその対象として具体物と抽象物の両方をとり、「美しい」の意味は大きく二つにわけることができる。以下にその二例を示す。
(1)人間の外見、目に見えるもの、耳に聞こえる音など、具...