社会政策 第2課題
日本の最低賃金制度の現状と課題について、社会政策の立場から論じなさい。
1.はじめに
資本主義社会のもとでは、賃金は市場における労働力の需要供給関係を背景に、労使間の交渉によってきまるのが原則である。では、なぜ最低賃金といった賃金の額に及ぶ介入を政府が行う必要があるのか。その理由として、一般的な事情と特別な事情が挙げられる。
一般的な事情とは、未組織労働者などの存在によって、労働者の集団的な交渉力には社会的な限界があるためである。個々の労働者は雇用主に比べて競争上不利益な立場にあるので、団結して労働組合を結成する。労働組合が存在すると、賃金交渉は集団的に行われる。しかし、労働市場には大量の未組織労働者が存在するのが普通であり、不況時には失業問題も起こる。それらは労働者側の交渉力を弱める社会要因になる。そこで、労働者を賃金面でも保護する社会政策として、国家の賃金の最低額を法定する制度が必要となるのである。
特別な事情とは、男女間での雇用差別と賃金の不平等、家内労働や農業労働といった伝統的に低賃金構造を抱えた産業の問題が存在することである。
このよ...