西洋近世教育思想史の流れの中で、特に幼児教育に関する思想と業績を展開した人物について、その要点をそれぞれまとめていくのだが、まずヨーロッパにおいて、近世への扉を開くきっかけとなったのは芸術・精神運動としてのルネッサンスである。そのルネッサンスにおいて「何物にも拘束されない個人の自由で人間らしい生き方を追求する」というヒューマ二ズムの思想おいて、子どもは今まで小さな大人として見られていたが、そうではなく大人とは異なった独自の存在として認められるようになったのである。そうした時代背景の中に現れたのがコメニウスである。
コメニウスは今日「近代教育の父」と呼ばれている。それはコメニウスが1657年「大教授学」を著したことからである。「大教授学」はコメニウスの理論を体系化した書物であり、「すべての人にすべてのことを教える普遍的技術」という一定の原理・原則を習得すれば誰でも適切な教育ができるということをうたっている。これはコメニウスが子育ての論理を今までの「家政」の分野の家庭教師の独壇場のものであったものから一般大衆のものへ広め、普及させたのである。またコメニウスは地位や貧富の差にかかわらず、...