「政教分離原則の意義と内容の考察」
はじめに
憲法は国家と個人の規定であることから、政教分離原則は政治ではなく国家についての法的制度である。それは「政」で表わされる国家権力と「教」で表わされる宗教とが分離することである。また、ここでいう宗教とは、宗教思想も含んだ宗教関連全般を指すものではなく、現実的なる宗教団体とか宗教集団を指すものである。なぜなら、宗教思想は人間の人生観を形成するものであり、政治や法にも重要な影響を与える。西洋史の観点からも政教分離という理念そのものが、まさに宗教的要請の下で生まれてきたと考えられるからである。ゆえに国家と宗教を完全に引き離すことは不可能であり、分離という表現は不適切である。すなわち、政教分離原則は、国家組織と教団組織を独立させること、ないしは独立している状態であると考える。換言すれば、それらは相互に分離されるべきであり、国家権力が特定の宗教団体を援助・助長、又は圧迫してはならないとする原則のことをいうのである。
国家と宗教の関係は、各国それぞれの歴史や宗教事情によって、様々な形をとることになったが、日本では、政教分離原則が戦後の反省から導入された...