民主主義思想論
「臆見」の正当性という観点からプラトンのデモクラシー批判に反論
プラトンはイデアを正しい認識・物事の真の在り方として提示した。ポリスの中で人間はそれぞれ違った資質を持って立ち現れ、各人が本来なすべきことをする。そしてその異なる職分全体が正義のイデアを反映した英知の基に調和を実現する。以上のような調和の実現のために正義のイデアを体得した人が王として君臨する「哲人王」による支配を彼は提唱した。
「臆見」は人によって異なり、それを互いに主張し合うことで無秩序が生じる。だが必然的な利害対立の中でも統一的判断を下すために人々は政治を考え出した。臆見といえども社会全体の意思決定に組み込まれていた方が結果として良いことをもたらす可能性があり、むしろせき止められた臆見が噴出する方が危険なのである。イデアに反する意見が「臆見」として排除されることは社会に対する見方が一つ減ることを意味する。世界は単一のイデアで語りつくせるほど貧しくはなく、多くの「臆見」を強引に少数に絞り込むことを政治権力というのであり、権力者は「臆見」の意識を持っておくべきである。従って世界にかかわる意見が複数存在...