言語能力の捉え方と臨界期について
言語習得または言語習得能力を検証する際、数多くの文献で「臨界期」に関する記述が見られる。臨界期は動物が持つ生得のメカニズムを指し、鳥類の刷り込みなどがよく例としてあげられる。この臨界期がヒトの言語習得に関係を持つか、ということを考察する上で、初めに言語能力の定義を、文献を参考にしながら見ていきたいと思う。
そもそも、言語能力とはどのような能力なのか。この見解に関してはさまざまな議論がなされている。言語能力自体が、非常に多元的な能力であり、その捉え方にも多くのアプローチが存在するが、本節ではバトラー後藤裕子著作の「日本の小学校英語を考える」の資料をもとに三つのアプローチについて考えていくことにする(バトラーは現状ではさらに細かい言語能力の捉え方が存在し、この三つの分類は大変大まかな分類であるとしている)。
一つ目の分類は理論言語学アプローチというグループである。理論言語学アプローチは言語能力を、母語話者の持っている、有限の言語単位から無限大に文を創造したり、創造された文を理解したりする能力と捉えた。つまり理論言語学アプローチの見解では、母語話者は直感によ...