家政学の歴史的変遷、家政学の担う役割、現代の社会状況を述べた上で、家政学の社会的展開を論じています。
家政学の社会的展開が、いま求められているのは何故なのか
課題である「家政学が現代社会において社会的展開が求められているのは何故か」を考えるに際して、これまでの家政学の成り立ちや背景を整理したうえで、家政学が担う役割、現代の社会状況から家政学に社会的展開が求められていることについて述べることとしたい。
1 家政学のはじまり
日本の家政学の始まりは明治時代に遡ると言われている。良妻賢母を養成するための家庭科は「手芸」と「裁縫」の教育が重要視されていた当時、家政学の本質を規定しようとする見解が芽生え始め、女性の自覚と責任による家族経営の重要性が主張されたのが始まりとされている。対象、昭和に入り、経験や勘による家事技術から、食物や被服分野の自然科学的実験法による実証的研究が始められるまでに進展し、第二次世界大戦を経る中で家庭科と家政学の区別がなされていくものの、日本本来の意識が喚起し戦後を迎えるまで続くこととなる。戦後を迎え「民主的な過程の建設」という家政思想のもとに本女子大学で家政学部が創設され、また、「家政学ならびにその教育に関する研究の促進と普及を図ること」を目的とした「日本家政学会」が...