1. 幕藩制社会とは、将軍を頂点として、大名・旗本・家臣などの幕藩領主階級が全国の土地を領有し、その下に農・工・商とはっきり区別された庶民を、強大な軍事力をもって支配するという仕組みを持った社会である。
被支配階層の中心をなす農民は、検地によって耕地保有を認められ、基本的には家族労働による自立経営を営むことができるようになったが、刀狩りによって武器を取り上げられて武士階級に上昇することが阻止され、農民の余剰生産物はすべて年貢として収取される原則で、農民には再生産に不可欠なぎりぎりの商品売買しか認められなかった。さらに農村での商業禁止、城下町への移住の禁止によって商工業者になることにも制限があった。職人・商人も武士階級の消費需要に応じるため、また軍団としての機能維持を助けるために城下町に集められた。一方、武士階級も検地によって、また、地方知行制の廃止、俸禄制への移行によって、在地性を否定され、家臣団として城下町に居住するようになった。
このような身分的分化は、当然に生産における分業の成立を意味する。武士は物的生産を行わなかったから、生活に必要な物資を、農民・手工業者から調達する必要が...