《伝統的工芸品》
鎌倉彫(神奈川県鎌倉市)
○鎌倉彫が創り出された背景
今から約800年前に源頼朝は鎌倉に幕府を開いた。そして、150年間鎌倉は日本の中心として栄えたが、その頃、中国から僧侶により禅宗が伝えられ、鎌倉には寺がいくつも建てられた。僧侶達は禅宗とともに中国から美術品も伝え、その中には彫漆と言い、漆を何百回も塗り重ねて作った器に文様を彫ったものがあった。あまりに美しかったため、仏像を作るために日本中から集まった仏師達は、これを真似して寺の道具や飾りなどを作った。これが鎌倉彫の始まりと言われている。
木で器を作り、中国風の文様を彫って漆を塗って仕上げる鎌倉彫は、室町時代から江戸時代になると寺の道具だけでなく、茶道具、文具、食器などと広まり、文様も中国風のものだけではなく、日本風の花や動物なども彫られるようになった。
しかし、明治時代になり、政府の神仏分離令により、仏像を作る仏師の仕事が殆ど無くなり、鎌倉に残った仏師は三橋と後藤という2家しかなくなったが、この人たちは仏像の代わりに鎌倉彫を作ることに仕事を切り替え、多くの鎌倉彫を作って日本だけではなく、パリ、ウィーン、アメ...