《音楽がわれわれにもたらす影響》
私には、非常にへそ曲がりな恩師がいる。その先生は、音楽を否定することを最大の目的としていた。彼は、音楽が大好きで、よくクラシックのCDを聴いていたが、音楽を否定する文章を書くきっかけは、「音楽は大好きだからこそ、否定してみたい。否定することで、更に音楽の知識を深められる」のだと言う。更に、「絵画を否定する人はいるし、美術館や博物館は芸術の墓場だと言う人もいる。しかし、音楽を否定する人は未だかつて存在しない」と言うのだ。確かに、音楽を嫌う人間はいないのかもしれない。
視覚は、目を手で覆えば遮ることが出来るが、音はどんなに手で耳を押さえつけても、逃れることは出来ない。これも、人が音楽を嫌わない理由の一つかもしれない。以前テレビドラマで、周りの音が気になって仕方がない作家を主人公にした短編を見た。話の筋はこうだ。音が気になって仕方がないため、作品を書き上げることのできない作家は、書き上げるために、例えば、家で水を流す音が気になれば、水を止めるし、外の子どもの声が気になるのなら、誰もいない、山の中の別荘などに行く。最終的に、絶対に音が生じない開発途中のシェ...